「究極のアンソロジー」というのは大げさですが……
「書き下ろしの解説記事と古今東西の傑作ロボット・フィクションを一堂に会することで、ロボットの科学・文化・物語を丸ごと総括しようと試みた」本書は、1930年までを第1章とし、その後は10年ごとに区分し、ロボットや、コンピュータ、AIの発展史をたどりながら、それぞれの時代に生まれた代表的なロボット・フィクションを紹介している。編者による各時代の概説は本書の根幹を成すもので、広範にわたるトピックをまずは無難にまとめている。特に創作分野については、SFプロパーはもちろんのこと、漫画や児童文学の分野までカバーしており、この企画に取り組んだ編者の意気込みがうかがわれる(協力者のアシストあってのことだろうが、かつて「NW-SF」誌に翻訳が掲載されたレムのロボットについての論考[アシモフ批判でもある]にもきちんと言及されている)。
いっぽう識者に寄稿してもらったエッセイ群は多彩で興味深いものもあるのだが、内容にばらつきがあり、その多くは私にはやや物足りなく感じられた。また、SFアンソロジー(が本書の主たる狙いではないのだが)としてみると、収録された物語が逸品ぞろいというわけではないのも残念なところだが、これは本書の性格上やむをえないだろう。むしろ、田辺聖子の「愛のロボット」やスラディックの長編『ロデリック』からの抜粋などを読む機会を与えてくれたことに感謝すべきなのかもしれない。
今回は内容の構成上年代別の区分が採用されたが、編者にはいつか、ロボットの認識、記憶、行動、判断といった機能別に章立てしたアンソロジーにも挑戦してほしいと思う(たとえば、フレッド・セイバーヘーゲンの「理解者」など、関連するテーマを含んだ物語をたたき台として提示し、識者にエッセイを執筆してもらうことも可能なはずだ)。その期待を込めて★はかなりおまけしてある。
ロボット短編の集大成。
1899年のアンブローズ・ビアス著『自動チェス人形』から、2002年の藤崎慎吾著『コスモノートリス』まで、瀬名秀明が集めたアンソロジーと、著名な知識人らのロボットに関する文章で構成される本書は、その圧倒される内容と濃さに驚かされつつも、1930年代から10年単位で紹介される各短編小説をサンドイッチする形で、日本を含めたロボット開発史や当時の政治・社会・風俗を交えて解説している構成なので、退屈せず読みやすく感じられ、そこにロボット観の変遷も見ることができて興味が尽きませんでした。 数ある短編の中でも、クールなスパイが魅力的な海野十三の『人造人間殺害事件』、ロボット版アダムとイブといったロジャー・ゼラズニイの『フロストとベータ』、徹底したフェミニズムを皮肉った田辺聖子の『愛のロボット』は珍品ともいえて良かったと思います。
解説者の内容もそれぞれ興味深いものが多く、パワードスーツの作品と実際の研究を扱った前田太郎や、機械やコンピュータを使った音楽の是非を問うた難波弘之などが、特に印象に残りました。
ロボットマンガの解説は別にあるものの、作品として読めるのが手塚治虫の『鉄腕アトム』だけなのはやや物足りない気もしますが、今度はビジュアルを重視した続編をぜひ刊行してほしいものです。