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「群書類従」の編者で知られる塙保己一を探偵役とした本シリーズも三作目を迎えました。 今回は、愛児を亡くした後、前妻との娘登勢に金十郎を婿に迎えるところから始まります。そんな喜びもつかの間、大晦日に愛妻たせ子を失います。一方で、愛人のイヨが熊三郎を産みます。そんな一喜一憂の時期の物語です。 本作は、3話からなっているのですが、今までのように保己一の名推理が光るというのは、第1話の「つるべ心中の怪」だけです。 第2話「赤とんぼ北の空」では、娘婿の金十郎が話の中心になります。 第3話は、保己一の周りの人たちを描いており、事件も彼らの情報を寄せ集めて解決して行きます。 従って、この本は「塙保己一推理帖」とは銘打っているものの、むしろ塙保己一その人を描こうとしているように思えます。その小説のスタイルが「江戸ミステリー」の形をとっていると考えた方がいいでしょう。 読んでいて、60歳に手が届こうかと言う主人公のエネルギッシュに目標に向かう姿が目に浮かぶようです。それだけでなく、一人の男、父親としての当たり前の姿を見せ、人に好かれています。周りには、大田南畝(蜀山人)を初めとする多くの人々が集まっています。まさに絶頂期です。 作者は、この巻でこのシリーズの筆を置くと言っていますが、いろんなエピソードや人の行く末が中途半端になったままです。是非、いつか続編を書いて欲しいものです。