「智慧の教え」と輪廻転生
仏教研究者や僧侶の間でも日本においては意見がバラバラに分かれる輪廻説(輪廻転生)の問題について、パーリ聖典に基づいて分かりやすく解説した本です。各所で行われたA.スマナサーラ長老の法話から構成されています。体系的な説明というよりは読み物として愉しめる内容です。しかし、初期仏教の輪廻説について必要な知識が網羅されています。迷信だとかヒンドゥー教から混入した土着思想だとかキワモノ扱いされがちな「輪廻」説について、お釈迦さまが希奇未曾有の教えを説かれたのだということは、賛否はともかく納得できるんじゃないかと思います。
内容のキモについては、他のamazon.co.jp のカスタマーレビューを拝読していただければ充分と思いますが、読みどころを付け加えれば、本書には輪廻を説く仏教サイドからの「靖国信仰」への見方も掲載されています。第六章 善行為こそ幸福の鍵(p126~)にずばり、「戦争に賛成する人は殺人と同じ罪を犯す」「戦って死んだら英霊になるのか?」という見出しがありますので、その辺も読んでみてください。
本書で語られているのは、好き嫌いの感情論や願望を離れた、「智慧の教え」たる仏教のものの見方から導き出された論理的な死生観です。A.スマナサーラ長老による輪廻説に関する本は、これまで自主制作の小冊子(絶版)しかなかったので、これから息長く読まれて欲しいと思います