自立、孤独
綴られているのは、どこで何を買ったとか何を食べたとか、原稿を何枚書いたとかもう三日も家を出ていないとか、地味な日常の淡々とした記録のみ。語彙も平易で文体も軽く、さらさら~と読めてしまう。だが読み終えたとき、何かが心に残っている。どうでもいいようなことばかり書き連ねた日記なのに、読む前とあとでは私の中の何かが確実に違っている。その「何か」にあえて名前をつけるなら、孤独、ということになるだろうか。著者の抱えている宇宙の果てほどの孤独感、その孤独感に私の中の何かが共鳴し、かすかな澄んだ音を立てる。自分を満たせるのは自分しかいない、という絶望的な真理が、かなしい音色を帯びて私の胸を揺する。仕事があって友人がいて衣食住に困らなくても、つまりは何をどれだけ手に入れても、決して満たされない何かがある。人と分かり合いたいと願う気持ちに嘘はなくても「友だちや恋人や親や兄弟姉妹が、まったく心のよりどころにならない」タイプの人がいる。著者がまさにそのタイプの人間であることが、全編を通じてそくそくと伝わってくる。仕事、友人、お金をそこそこ手に入れた自分は幸せだ、と著者がしつこく言えば言うほど、著者の感じている気が遠くなるほどの孤独がくっきりと浮かび上がってくる。まるで、日射しが明るければ明るいほどその影が濃くなっていくように。
著者の小説のエッセンス
作家として本格的な売れっ子になる前のものなので、夢や期待と同時に将来への不安が率直に綴られている。自分を甘やかすのも、追い詰めるのも自分という言葉が印象的だ。手にしたお金は全部使う、一冊の本を一気に読めない、必要より楽しむために買い物に行く等、思わず同意してしまう話も語られている。著者の小説が好きな人には、うなずける話が多かったと思う。
本書は一人の快適さ、心細さ、そしてやっていけると思えるまでの赤裸々な記録だ。このままずっと一人きりなのかもという不安や、一人は居心地がいいけどちょっと寂しい。そんな思いを的確に表現している。著者の小説のエッセンスを見せてもらえた気がする。
身近な山本さんに乾杯♪
作家さんぽくないエッセイ(いい意味で)でした。
とても親近感のわく作品で、すぐ読み終わってしまったほど。
ところどころ山本さんの体調の変化が感じられ、心配してしまいました。独身・30歳すぎの女性はもっと彼女を身近に感じられると思います。
今後も素敵な作品を期待します!