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草原の椅子〈上〉 (幻冬舎文庫)

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草原の椅子〈上〉 (幻冬舎文庫)の商品レビュー

5.0 穏やかで深い
上巻の中盤くらいまでは、なんで読み始めちゃったかなぁ…とつまらなく感じてました。山場もなく、とにかく展開がスロー。まだ読むには年齢が追い付いてなかったかな?と。しかし、中盤が過ぎ始めたあたりから物語の温度も展開のペースも変わってないのに引き込まれ、物語の深さに感動し始めました。未熟者の私自身が世の中を語るにはまだ早いですが(若くもないですが)大人と呼ばれる人は是非読んで欲しい一冊だと思います。また、若い人も読んで欲しいです。色々考えさせられ、穏やかだけど強烈な刺激が与えられました。
5.0 人間としての優しさ、生きていくという思い
「人情のかけらもないものは、どんなに理屈が通ってても正義やおまへん」

物語の序盤に富樫重蔵の言葉を思い出すシーンがある。
孔子の言葉を富樫が自分の言葉として咀嚼した名言である。
私たちは生きていくうえで理屈ではわかっていても
納得のいかない出来事にいくつも直面する。
そこにほんのわずかでも人の情が垣間見れたのであれば
私たちはその納得のいかない出来事に対して少しは心を許すことができる。
人間の機微がわかるほど自分はまだ年齢を重ねてはいない。
だからこそ憲太郎や重蔵のように、人の痛みを分かち合える
そうして自分の気持ちや欲望を抑制できる、いや抑制ではなく
品のある大人として自分を律することができる男になりたいと感じた。

何のために働くのか、などと考えるのは青臭いのか。
自分を大切にし、家族を大切にすることで仕事を大切にする。
そして自分に与えられた人生の使命を遂げていくのだ。
壮大なテーマなようであるが、一人一人の人生を
もっともっと真剣に向き合おうと考えさせてくれる物語。
10年後、20年後、また違った気持ちで読み返すことができる作品である。


5.0 「優れたおとな」たらん、ということ…

 最初に私事で恐縮だが、06年末から妻は病を得ている。その妻が入院先の患者向け図書として備置してあったこの『草原の椅子(上・下)』を読み、私に「とても心を動かされた小説だから…」と当書を勧めてくれた。私は、短編集である『胸の香り』を除き、宮本輝氏の長編作品についてはリリシズム溢れる名作『泥の河』や『螢川』以来久しく遠ざかっていたのだが、早速、本書を購入、味読した。結論から先に述べると、熟年男(?)である私の胸底にじんわり染みわたるような感動を与えた小説であった。

 おそらく本書の「陰の主人公」は、中学校しか出ていないカメラ量販店のオーナー、富樫重蔵であろう。彼に作者の意想(というよりホンネ)が投射されている気がしてならない。真のヒーローは、本作品の主人公としての制約を免れ得ない遠間憲太郎ではなく、道化回し的なバイプレーヤーである富樫重蔵ではないだろうか。そして、この小説に通底するのは、たとえば富樫の洩らした「一所懸命働いている人間から、だんだん、だんだん、働き甲斐や生き甲斐を失くさせていくのが、この日本という国や」(上巻)といったような“日本(人)に対する落胆・失望”と、フンザの老人が発した「正しいやり方を繰り返しなさい」という“優れたおとなへの方向性(使命)”であろう。

 宮本輝氏は、作中において遠間に「子供たちが尊敬できるおとながいなくなったんだ。いまどきの子供たちよりも、いまどきのおとなたちを問題にしなきゃあいけないんだ」(下巻)と語らせている。氏は「あとがき」で「『日本』に『おとな』がいなくなったことを痛切に感じ」、その「おとな」に関する氏なりの定義を述べた後、氏は「『草原の椅子』は、私自身が、優れたおとなたらんとして書いた小説かもしれない」と同書のモチーフ的なことを書している。そういった意味をも踏まえ、この『草原の椅子』は熟年男性向け傑作小説の一つとして数え上げても良いだろう。
5.0 勇気がわきました
読書からしばらく離れていた時期に人から薦められ読みました。宮本輝さんの作品にまたはまりだすきっかけとなった1冊でした。

題名からストーリーを想像することはできませんでしたが、読み終えたあと、宮本輝さんはなんて素敵なタイトルをつけられたのだろう、と思いました。主人公の憲太郎より、その友人である富樫の言葉や生きざまに大いに共感しました。

小さな存在だっていい、傷つこうが失敗しようが、ひたむきに生きていけばいいんだ、と勇気を与えられました。「月光の東」、「優駿」、「錦秋」などの宮本さんの名作と並び大好きな作品です。

3.0 うーーんちょっとわからなかった
久しぶりに宮本輝さんの作品を読みましたが、うーーーん。まあ、おじさん、おじさーん!って感じで、ちょっと入り込めませんでした。どうしても客観的に距離をおいて読んでしまいました。女性に恋をして、その女性と旅に出るあたりも、ちょっとおじさんの理想っぽいし、世の中を否定し、日本はダメだ、日本人を卑下するあたりも、説得力に欠ける気がしました。
あまり魅力的に思えない登場人物(私には)を、お互いに誉めあって、中年男が、おまえはすごい、おまえはえらいって!他のやつらはみんなだめだみたいな・・・。そりゃーないよ。男の子を取り巻く人間は確かにどうしようもない人ばかりだったけど、いい人間に出合って自分達は幸せだ。っていうのもどうかと思う。

ただ、男の子が心を開いた子!供がたくさんいる家族は良かった。
それと、「魔が差す」って言葉。本当に全ては「魔が差して」起こるのかもしれないと思わせた。

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