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最後の家族 (幻冬舎文庫)

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最後の家族 (幻冬舎文庫)の解説

   リストラにおびえる父親・秀吉、若い大工と密会を重ねる母親・昭子、引きこもりの長男・秀樹、10歳年上の元引きこもりの男と交際する長女・知美。ある日、向かいの家で男に髪をつかまれて引きずられる女を目にした秀樹は、それが「ドメスティック・バイオレンス(DV)」だと知り、いつしか女を救うことを夢想しはじめるが…。

   内山家は現代家族が抱えるさまざまな問題に直面している。しかし、「救う・救われるという人間関係を疑うところから出発している」と語る村上は、内山家に安易に「救い」の手を差しのべたりはしない。「家族は楽しく食事しなければならない」「親は子供に期待する」といった現代家族を漠然と包みこんでいる幻想をはぎ取られた内山家は、一気に崩壊へと突き進む。にもかかわらず、読後感がさわやかに感じられるのは、多くの困難を引きずりながらも徐々に自立していく内山家の人々が、家族の崩壊と反比例するかのように生き生きとしてくるからだ。特に秀樹が、女を救おうとする自分とDV加害者とが「似ている」ことに気づき、涙するシーンは印象的だ。

   村上は2000年に発表した『希望の国のエクソダス』で日本経済や教育を論じ、主人公の中学生に「この国には希望だけがない」と語らせた。そうした絶望感を経て書かれた本書には「救い」はないが「希望」の光は見て取れる。読み手は、家族それぞれの視点で同じシーンを描くという手法で構成されるこの物語で、登場人物の誰かに自己を投影し、自分にとっての「希望」を見いだすことができるに違いない。(中島正敏)

最後の家族 (幻冬舎文庫)の商品レビュー

5.0 遅ればせながら
初版から7年を経て、遅ればせながら読みました。今年春のドラマで、月9というメジャーな時間帯に、若者それぞれが抱える問題の一つとして初めてDVが採用されていたことを思うと、著者が取材を重ねてこの小説を書き下ろした頃と、現在の状況はあまり変わっていないどころかさらにエスカレートしているように感じます。「親しい人の自立は、その近くにいる人を救うんです。」という弁護士の言葉には、子の立場、親の立場のどちらからも深く共感するものがありました。
4.0 家族にも読んでもらいたい小説
村上龍の引き篭もりを描いた小説で「共生虫」というものがあるが、そちらは家族内のコミュニケーションが破綻して、残酷なまでの悲劇を呼ぶまでに至るのに対し、この「最後の家族」は、家族それぞれが自立した考えを持ち、結果ハッピーエンドに結びつく事になる。ハートウォーミングな内容故に、彼の持ち味とも言える、鋭い緊張感を味わえないというのは若干不満ながらも、「共生虫」のように個人的に楽しむ本とは違い、他人にもこの本を薦めてあげたいという気持ちが起こる。僕自身、読み終えた後に、自分の家族にもこの小説を読んで欲しいなという気持ちになった。

この小説の面白さは、家族4人のそれぞれの目線より物語が進行していく事だろうと思う。家族という一番身近な存在故に、お互いの気持ちは通じ合っているんだという錯覚というものは誰にでもあるように思う。ただ、こうして、一人一人の目線から物事を考えると、いくら家族でも他人の事は基本的に解らないのだと言う事を知る事が出来る。この一家はお互いがそれに気付き始め、自分の意志というものをちゃんと一人一人が持ち、それを相手に伝える事により、結果皆が支えあう事が出来たのだと思う。

理想の家族像。そういったものは誰しも曖昧ながら持つ事が出来るように思う。ただ、そういった幻想がそれぞれ個々の関係に多くのひずみを生み出すように思う。この家族は引き篭もり等の問題が起こることによって、それぞれが学び、自分で目いっぱい考えを出し、最終的に幸せになれたように思う。多分「共生虫」との大きな違いはそこにあるのだろうなとも思う。
4.0 さまざまな視点から
父、母、兄、妹それぞれの視点からストーリーが展開されます。
5.0 5★コーヒーが象徴するモノ
リーマンにとってコーヒーは目覚まし時計だ。コーヒーは出勤・退勤のタイムカードだ。
夜駅の売店で背広オヤジが、缶コーヒーと夕刊を買ってる。仕事帰りか、『お疲れー』と
よく思う。コーヒーは働くオヤジ達のカンフル剤であり、休もうとする脳を叩き起こす
ムチでもある。コーヒーさえあれば、徹夜でもなんとか社会タイムに、体内時計を強制的
にシンクロさせる事ができる。■それに対峙するのが、溺愛コンビニとヒッキー息子だ。
コンビニはどんな非常識な時間帯でも、母親の様に受け入れてくれる。まるでサンタマリア
だな。ヒキコモリは太陽を浴びない。だから体内時計が狂う。そのくせ深夜に眩しすぎる
コンビニにたかる。コーヒーは社会でふんばる親父を、コンビニはヒッキーの数少ない窓口
として、それぞれ象徴している。■物語中盤から、ヒッキーはコーヒーとの和解を試みる。
反省の印として更正の兆しとして。徐々に歩み寄る。ヒッキーがびびった時、背中を押す
のはホットコーヒーだったし。外部他者との面談で差し出すのも、やはりコーヒーギフト
だった。■この物語は、ヒッキーが社会復帰していく過程を、コーヒーが効果的に演出し
ている。オイラの好み?アイスカフェモカだよ。猫舌なもんで。ハフ寝みぃよサンタマリア。
おやすみ
PS●おなじみ固有名詞多用の具体描写は、好みの分かれるところだが。今作は実験的手法もあり。4つの視点がパラレルでザピってます。読易く面白く、何か響くモノも。三拍子そろった貴重な名作だ。●『ライン/共生虫/最後の家族』村上龍が描く現代コミュニケーション三部作ついに完結か!?NOVAよろしく異文化こみナラ『インザ・ミソスープ』
4.0 村上…龍!?
村上龍の小説で泣いたのは初めてかもしれない。

テレビドラマを最初に知って、いや、松浦亜弥が出ているドラマ、ということで最初に興味がいって…、という三段階にてこの小説を知った。

いい意味で村上龍「らしさ」が抜けていて、いい意味で村上龍スパイスが、村上龍ワールドのキャラクターたちが(「69」の女子高生、「共生虫」のひきこもり…)融合して、そしてやはり村上龍のリズムで読ませる作品。

ドラマ化された云々よりも、一冊の小説として、「おもしろい」

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