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火の粉 (幻冬舎文庫)

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火の粉 (幻冬舎文庫)の商品レビュー

5.0 女性目線
温厚で善人。人の良いお隣さん武内。しかし限りなく怪しい男。「みんなだまされないで!この人はおかしい」と叫べば叫ぶほど、「おかしいのは自分のほう」の烙印を押されてしまうであろう、もどかしさ。怖いです。

武内のキャラクターは言うまでもないが、彼のことを素直に信頼していく回りの人達の描かれ方が実に細かい。特に物語の進行を担う形となる雪見と、義母。驚くほど女性目線です。
これが私の「初・雫井」。他の作品が楽しみ!
5.0 動機は人それぞれ…
初めて読んだ作者の本が本作でした。
正直、初めて聞く作者名でしたし、読み始めはまっったく期待してなかったのですが…
読むにつれて、武内という一見良心的な人間に周囲がジワジワと疑惑を抱いていく過程に、思わず後ろを振り向いてしまう程の、恐怖というと大袈裟なくらいの、ゾクッとするものを感じ、あっという間に読み終えてしまいました。
え!?それだけの理由で犯罪なんて犯すかな??
という程の犯人の動機。
けれど、他の登場人物の細やかな心理を描いているからこそ、
意外と人間なんて、こんな単純な理由で犯罪をあっけなく犯すのかもな…
と考えさせる人の心の複雑さを感じました。

個人的には、雪見とその娘まどか、義母の嘉恵のシーンが、同じ女性として相容れるものがありとても好きです。
解説にもありましたが、
この作者さんは女性の複雑な心理描写がとてもうまいです。

意外なラストではありましたが、ホロリとする終わり方で大満足です。
5.0 ハマる
通勤電車で毎朝夕読んだのだが、降車駅で栞を挟んで閉じるのを躊躇われるほどハマった。

本当、雫井作品の人物描写は素晴らしい。
それは「魅力あるキャラクターを創出する」という意味ではない。
普通の人々を深く細やかに描くことで、物語世界の魅力が高まるのだ。

また、「異常性格の隣人」というテーマは、実際にある大量殺人犯(既にこの世にはいない)が
同じマンションに住んでいて、接触した(イチャモンを付けられ一方的に恫喝されただけ
だったが)経験のある自分にとって、全く他人事とは思えないリアリティを持って迫ってきた。

他のレビュアの方々も指摘している通り、冷静な頭で考えれば作りこみの甘い部分は多々ある。
ラストがドタバタした感も否めない。
だがしかし、それすらも気にならないくらいドップリ漬かり込んでしまった。
それはやはり、登場人物たちの呼吸が聞こえるかのような、雫井氏の描写力の賜物だろう。
5.0 ママの気持ちだ!
図書館でなんとなく借りてきました。
面白くて一気に読み終えてしまいました。

最後の解説のところで
この作者は女性の心理描写が上手いと書いてありました。
本当にその通りで、読みながら
これは2歳児を持っているママが書いているに違いない!!!
と確信するほど、私の気持ちを言い表していました・・w
でも、作者は名前からして多分男なんですね、凄い。
育児関連の本も参考文献に入っていましたが
読んだだけでどうしてあんなに当事者みたいな文が書けるんだろう。

でそのあとがきの言葉を借りて書くと
「夫が収入の無いことから(夫の実家と)
 同居を余儀なくされた不自由さと
 これまたいずれ手が離れる日が来ることは分かっていても、
 とてつもなく遠く感じる、聞き分けのない娘の育児に追われる日々。
 雪見はママ友達との付き合いに悩み、」・・・・・
このママは主人公ではないと思われるんだけれど、
主にこの人の目線から書かれていて
育児に疲れる私に似ていると、感情移入しまくりでした。
もちろんストーリーも面白かったです。
5.0 類まれなる筆力で読ませる、サスペンス小説の傑作!
最高におもしろい。
息つく暇もない。ページをくるのももどかしい。
物語がどのように帰結するのか、気になって知りたくてジリジリしてしまう。

元裁判官・梶間勲の隣家に越してきた男・武内。
二年前、勲は殺人で起訴された武内に、無罪の判決を下していた。
恨みを買ういわれは何もない。だが梶間家の周辺で、次々と不可解な事件が起こり始める。
にこやかで親切で情の厚い武内。それは彼の仮面なのか?本当の彼はどんな人間なのか?勲の下した判決は間違っていたのか?それとも?真実は??

武内のキャラが秀逸。
人間の複雑さ、ひずみ、脆さ、危うさ、そして普遍性をこんなに体現した人物は今まで誰も書かなかったんじゃないかと思える。うまい。怖い。

梶間家の面々の人物も、深く掘り下げて描かれる。
特に義母を介護する尋恵の心のわだかまりと、武内に対する不安と疑心を理解してもらえない雪見のじれったさには、ものすごく共感してしまう。その心理描写だけでも読みごたえがある。俊郎の脳天気なお気楽さには本気で腹が立つし。

・・・のトリックが暴かれるシーンがよい。情景が映像となって目に浮かぶ。
開くふすま。パシーン、パシーンと響く音。俯瞰するカメラ。勲のセリフ。解ける謎。
鳥肌がたつくらいうまい。感嘆する。

ラストはアメリカ映画的で、まあちょっと作りすぎの感は否めない。けれどよくぞここまで引っぱってくれた、とも思える。

登場人物のリアルさ、たくみな物語構成、奇抜ではないのにあっと驚くトリック、迫力のラストシーン、そして考えさせれるテーマ。傑作のあらゆる要素を満たしていると思う。

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