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半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

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半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)の商品レビュー

5.0 いわゆる「文学」ではありません
上下巻を2日で読み切ってしまいました。他のレビューアーも書いているように、字数が圧倒的に多いです。丁寧に読むと、特にカタカナの名前の人物が誰が誰やらわからなくなり、いちいち確認していると、イライラします。でも、そんな必要は全然ない物語です。これを「文学」と思って読んで文句を言っている人は、現実がわかってない人です。北朝鮮の兵士については、知識がないのでわかりませんが、政府内の状況、病院の状況、東京と福岡の市民の感情など、どれもこれもまさに今の日本ではありませんか。この小説の後で本当にドルが暴落し、日本の経済状態が悪化し、オバマ大統領が任命した駐日大使は「ジャパンパッシングの現れか」と新聞にかかれ・・・村上龍が書いたこの小説の書き出しにあまりに似ていませんか? 確かにグロいです。活字が多すぎます。誰に感情移入していいかわかりません。下巻は突然ものすごいスピードで話が進んでしまうし、ラストはちょっときれいすぎ。でも、それがなんだというのでしょうか。これは、文学ではなく、近未来シミュレーション小説というべきでしょう。村上龍は、日本の現状を官僚よりも政治家よりも銀行家よりも企業家よりもまじめに本質を理解して憂えているのでしょう。よくこんな小説を書いたものです。読むこっちもヘトヘトになるのですから、村上さんは、さぞや疲労困憊なさったことでしょう。しかし、これ以上こんな小説を書かれては、ファンは困りますので、当分はのんびり休養にあてて適当なエッセイでも書いていてほしいです。しかし、この小説の中で、一番説得力がある場面は、赤坂のバーでした。これが村上さんの一番親密な世界なんでしょうねえ・・・
5.0 傑作。全4巻でもいける。もっと描いてもいい。それほど面白い。
内容については、他のレヴュアーが書いているので、割愛。

上巻とはかなり趣が異なり、イシハラグループの最終的な破壊工作に至るまでの
各人、各方面が描写されている。

ただし、上巻で描かれた内閣官房や危機管理に関わる政府要人たちの動向は、
パラレルにはほとんど書かれておらず、そこが残念。
同じ九州内の他県の動向や市井の福岡市民を登場させてもよかった。
もっと描けたし、描いて欲しかった。

これだけのスケールの大きな物語なので、
切り口は豊富にあるし、上下2巻は確かに相当なボリュームだが、
その倍あっても濃密な心理・情景描写があれば、退屈しないはず。

それにしても傑作、一気に読めた。
2.0 もったいない
この作家は初期の作品から不条理な暴力を扱ったりしていて、好感が持てる。
ただ、ときどき集中力が途切れてしまうのか、それとも忙しいのか、突然安っぽい展開になってしまうのが惜しい。

また、自分自身の問題を普遍的な問題と混乱してしまう癖のようなものがあるらしく(その表現がまた押し付けがましい)、主語に違和感を感じるときが多い。だからキャラクター作りが甘くなる。そうなるとコントラストも美しくないので、めんどくさい女と一緒にいる時のようなうっとうしさを感じるときがある。

作者は怒るかもしれないが、無闇にせっかちな性格を直さないと一流の小説は書けないだろう。実際のところは、この人、ものを書くのがあまり好きではないのかもしれない。

なんていうか、もったいないなぁと思います。
3.0 特技が発する 一瞬の輝き
『13歳のハローワーク』の直後に執筆されたというのもあり、
「オマエら・・・ 好きなコトやってていいんだよ」
という村上龍さんの声が聞こえてきそうだ。

"経験していない"という恐怖が見え隠れしつつ、
突飛な登場人物は、限りなく突飛していて、
魅力的なキャラに仕上がっている。 (若干、登場人物が多過ぎるが・・・)

子どものように自由な世界と、
大人のリアルな現実が入り混じりながら話は展開してゆく。

『AKIRA』や『グーニーズ』『ぼくらの七日間戦争』『バトル・ロワイアル』
のように、笑い、涙、暴力、権力、恋愛、青春、戦争。
キラキラとドロドロが混ざったごった煮感覚を味わいたい方にお薦め。
5.0 村上龍がこれでもかと見せつける圧倒的な世界(上巻と同内容)
ずいぶん前に出版されていて、気にはなっていたものの、まとまった時間で一気に読んだ。


経済が没落し、失業率が10%を越え、アメリカからは見放され、国内には閉塞感が漂い、
その出口を核武装も辞さない軍拡主義に見出した日本に、
北朝鮮の「反乱軍」を名乗る精鋭部隊が侵入し、福岡を「占領」、
その独立と、12日後、12万人の「反乱軍」が日本に入国することを日本国政府に要望する。
一方、イシハラというカリスマ的人物の周りに集まった少年たちが、
その「反乱軍」に対して、ある計画を実行する、というストーリーである。

荒唐無稽なようで、上巻は、圧倒的な情報量で、非常に緻密に描かれている。
日本の政治家が「最優先事項を決められない」ということ、
北朝鮮の内情、兵士の訓練の様子、人間性の記述、冷徹さ、脆さ、
イシハラグループの少年たちの生い立ち、心の傷、心理描写、
あまりにもリアルであり、巨大な作戦が少しずつ動いていく様子に、まったく無理がない。
下巻の計画実行のくだりは、さすがにリアリティーに欠けるように思えたものの、
構築されている世界はすさまじい。

北朝鮮兵士の日本人からは想像しがたい精神構造、退廃を発見する瞬間、
北朝鮮兵士とアナウンサーとの恋、それを打ち消す職務への邁進、
西日本新聞記者の北朝鮮兵士への問いかけ、
「国家というものは必ず少数派を犠牲にして多数派を守るものだ」という問題意識、
処刑式を阻止しようと走る老医、
少年たちの、それぞれの物事への狂気的なこだわり、愛情の欠落、何かの欠落、
自分を刺した母親を許した少年など、
映画のシーンが思い浮かぶような印象的な場面、
強烈なイメージを残す思考の跡が随所にある。


著者は、
「コインロッカーベイビーズ」で、人間と人間のつながりは何か、本性は何か、ということを問いかけた。
また、「五分後の世界」、「希望の国のエクソダス」は、
「日本は有史以来、日本固有の領土を侵略された経験を持っていない」という問題意識が貫かれ、
日本の現状を根底から問うていた。
本作は、その両方の問いが、さらに激烈な形で、現れているように思う。


グロテスクな描写もあり、非常に好き嫌いが分かれる作品だとは思うが、
現在の日本へのアンチテーゼ、心の傷とその快復を、圧倒的な情報量と迫力で描ききった、傑作だと思う。

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