「間違いだらけ」とはまた違った良書
私は自動車が大好きで,いろいろな車の評論が載っているということで,以前は有名な「間違いだらけ」をよく読んでいました。しかし,次第に徳大寺氏の論表姿勢にどうしても納得がいかなくなり,この種の本は次第に読まなくなっていました。しかし最近になって本書を発見し,目を通してみたところ,非常に面白かったのです。徳大寺氏の本を読むと,高級車を何台も持っているお金持ち自動車マニアの崇高な批評という印象が拭えなかったのですが,太田氏の書き口は,「普通の人でも,こういう車を選んだら,こういう風に幸せになれるよ」というような提案型の姿勢で,好感が持てました。かつて日本一のフェラーリ遣いで名をはせた筆者ですが,マニアックな批判に止まらず,「家族が喜ぶ車」「普通に運転していて楽しい+安全な車」といった分かりやすい視点から,「こういう車だったら,自分にぴったりだよなあ」という気にさせるような情報を提供してくれます。特に,徳大寺氏が切って捨てる傾向の強いミニバンに関する記述はていねいで,このジャンルの車を必要とする人たちにとっては,とてもありがたいのではないでしょうか?
概して,自動車,そしてその自動車を利用する人間に対するあたたかな愛情に基づいた,筆者のやさしい論評姿勢に,好感を覚えました。切って捨てるだけが,よい評論ではない。大多数のユーザーにとって,本当に役に立ち,また幸せになれるための情報を提供することが,本来,この種の職業に求められる姿勢なのだということを,改めて感じさせられました。続きが出るのが楽しみです。