さらに詳しい福祉の実践論
一世を風靡した『五体不満足』の乙武洋匡君の存在は、率直にいって障害者を美化する以上のものはなかったと私は思っている。たとえば現在、かれは某雑誌でスポーツジャーナリストとして記事を書いているが、もし乙武洋匡というブランドを知らずして読もうものなら、それこそ商業誌に耐えうる文章ではない。これは業界ではもはや常識となっている。つまり、彼はあの陽気な障害者という立場で某雑誌に執筆しているだけであり、そのような「肩書き」さえなければ、この競争社会では確実に「負け組」に含まれる。 これとまったく同じ立証をしているのが著者である。前著『「福祉」の呪縛』でも、たとえば身体障害者は「弱者」というレッテルのもとに保護を受けるのではなく、あくまでも一人の人間として社会から支援してもらいながら自助努力をするべきだという主張をしているが、この著作でも根本を貫いているものは変わらない。むしろ強化されているほどだ。
著者はさらに国家観や、いまだ実像がつかめない構造改革についても、その視点から変革を説いている。もちろん抽象論に終わることなく、教育や産業のあり方まで、ごく具体的に提言している。前著に続き、すぐにでも実践できるものばかりだ。残念なことも前著ゆずりなのだが、とにかく文章がカタい。日本語は上手なのかもしれないが、「伝える」という点では敷居が高い。それだけに、乱読の類に収めることなく、腰をすえてじっくりと読み解く必要があるだろう。