明晰夢の可能性を示唆する良書
明晰夢とは、夢の中で、「これは夢だ」と自覚することの出来る夢のことである。さらに、「夢の中の自分」は、この自覚を保ちながら、その夢のなかで自由に行動することが出来るという。著者のスティーヴン・ラバージは、研究室において何度となく明晰夢を体験し、そのことを外界に知らせることに成功している。(レム睡眠時の目の動きは、夢の中での視線の動きに対応していることを利用し、あらかじめ合図を決めておく方法による。これは彼だけでなく、実験に参加した被験者によって再現されている。)では、明晰夢が実際に可能であるとして、それが私たちにどのような役に立つのだろうか? 私が特に興味を覚えたのは、著者のラバージが明晰夢の中で、夢の中の否定的な存在を、自ら進んで受け容れたシーンである。これは、夢の再現等の技法を用いる心理療法・ワークの類を「夢の中で“実際に”行う」ことが、明晰夢においては可能であることを示唆している。しかもこの場合、治療効果は即時に現れ、彼は「その場で」充足感や幸福感を感じ、その感じは目覚めた後も持続したという。
なお、体外離脱体験(OOBE)が、「部分的に明晰な夢」である可能性を指摘している点は興味深い。体外離脱体験において体験者が主張する「これは夢ではない、現実に起こっている」という感覚は、ラバージによれば「明晰でない夢」における主観に極めてよく似ているという。OOBEが夢か否かという点は、明晰夢を見ること、及び明晰夢に習熟することによって将来明らかになるのかも知れない。とは言え、惜しむらくは、この本を読んだだけでは、明晰夢を実践することは難しいであろう。その点で、星4つとする。本書は2004年2月現在、出版社品切れとなっているが、公共図書館などで見かけられた場合には一読をお勧めしたい。