横山作品に凡作なし
警察小説と言えば横山秀夫、横山秀夫と言えば警察小説。
すっかりお馴染みとなり、ややもすればワンパターンと言われる
懸念もあると思うのですが、そんな周囲を黙らせる、衰え知らず
の高品質ぶりには、ただただ舌を巻くのみです。
警察という閉ざされた世界が生み出した、戒律と自己免疫機能。人間としての警察官が持つ欲望。この両者の間に生まれる軋轢と
葛藤がベースであり、この組織の海を必死に泳ぐ警察官の人間臭
さが絶妙のスパイスです。
快適さと不自由さが同居するものの、この絶対安全な警察組織の
檻から抜け出してもいい、そう決断させるまでの物語が実に巧み
で、どれも納得できるものです。警察官としてではなく、人とし
ての決断に読者も共感とカタルシスを得ることができます。
本作は、ミステリーよりもストーリー重視で、エンディングも
読者の想像力に委ねる余韻を持たせた作りとなっています。
生意気ですが、人情味あふれる本作には良い選択だったのでは
ないでしょうか。
とある雑誌に、一番起きて欲しくない事件、特に社会的な死に追
い詰められる事件を主人公に与える。(うろ覚えですが)という
主旨のことを横山氏は書かれていました。
そうして作品に緊張感を持たせ、更に読みやすい文章でスピード
感を持たせているので、グイグイと引き込まれていくのでしょう。
星四つの理由は、横山作品の中に本作を上回るものがある為です。