あくまでも一つの意見として読む分には面白いかもしれない
トランスジェンダーという言葉は、
自身の肉体的性別に違和感を持つ者の総称として、
広く用いられようとしている。
しかし、その概念はわが国においては新しく、
その意味あいも使う者によってまちまちであるというのが現状である。
「性別違和」を訴える当事者を広く指す用語としては適当かもしれない。また、筆者は本文中で、
性同一性障害の当事者も女装者も同じカテゴリーに属するとし、
ジェンダーフリーなどの意識改革によって、
当事者の悩みは軽減されると語る。
たしかにそれも一面の真理ではあろう。
しかし、いくら社会が変わろうとも、
肉体の違和感が消えることなく続き、
手術によってしか救われない人々のことを思うとき、
筆者の論点は、そうした重症当事者に対し道を閉ざす危険性をはらんでいると言わざるをえない。
なぜなら、ジェンダーフリーで解決されるのなら、
何も医学界のタブーを打ち破る必要はないはずであり、
手術適用などは認められなくなる危険性があるからである。
肉体違和を外科的に緩和する必要のある人には、
筆者の意見は逆風になる可能性があるだろう。
(もちろん筆者はそういう意図で書かれたのではないのだろうが、
結果的にそのように読まれる危険性があるということである)。
この問題について、わが国よりもはるかに先を行く諸外国にあっては、
様々な価値観の国々において、医療行為として
性同一性障害が位置づけられていることを忘れてはなるまい。
医療不信が叫ばれる昨今であるが、
少なくとも性同一性障害に関しては、
医学界においてあえて日の当たらない分野に対し、
多くの専門家が当事者の声を聞き、諸外国の例を参考にしつつ、
きわめて優れた動きを慎重にすすめようとしていること、
そのことは銘記すべきである。
疾患としての位置付けによって救われる人々もいるのだから。
逆行する結果となれば、
重症の当事者は再び、
奈落の底に叩き落され、
死を選ぶ者さえ多く出ることになるだろう。
しかし、性別違和、トランスジェンダーの問題を
考える上にあっては、
ひとつの意見として読んでみるのも
ある意味においては面白いかもしれない。
ただし、性同一性障害について理解するには、
本書はきわめて不十分であると言わざるをえない。
あくまでも同時に、
虎井まさ衛氏の書かれた
「ある性転換者の記録」
「あるトランスジェンダーの記録」
>併読されることを強くおすすめするものである。
性同一性障害を理解するためには最初に読んではいけない本
正直言って,この人の人生のどこが苦悩なのか?
安定した職業,幸せな家庭を手にし,なおも綺麗な格好をしたいという。
世間からは「いいとこ取り」としか思われないだろう。ほとんどの性同一性障害の人たちは,戸籍の性別が訂正されないことから,まともな職業にもつけず,
ホルモン治療や性転換手術のために子孫を残すことさえできない。
それでも,自分たちの性自認に忠実に生きる道を選んでいるのだ。
したがって,性同一性障害の本当の苦悩を知るためには,この本を最初に読むのは絶対にお勧めできない。
せめて吉永みち子「性同一性障害」や,虎井まさ衛の著作を読んだ後にすべきだ。
トランスジェンダーということ
この本はトランスジェンダーとは何かを丁寧に解説してあるので、ジェンダーの問題をより身近に感じさせてくれる。「女らしい」とか「男らしい」という観念から人を見るのではなく、色々な視点でとらえる事も重要なのだと改めて実感できた。ただ、作者自身の苦悩や葛藤があまり語られていないので彼女自身の人柄があまり見えてこない。あくまでもトランスジェンダーとは何かを知りたい人にお勧めの本。一人の女性の物語仕立てになっていないことは確かだ。