手軽に応用できる実用性のある良書
しずかてつひとは1960年(群馬県前橋市)生まれ。東外大研究生修了(84年)ってことは,外大卒じゃないのかな? コロンビア大学ティーチャーズカレッジ(英語教授法修士課程)修了(MA in TESOL)。PhD(レディング大学,00年)。 言語テスト論。高等学校英語の文部科学省検定教科書の編集に参加。『英語授業の大技・小技』など。日本での指導教官は若林俊輔(拓殖大学外国語学部教授,元東京学芸大学)。手許のは3刷(04年)だが,本書題名がかなり効果的。4頁だが索引もあって読者の便をはかっているのはありがたい。第1章 英語テストを論ずるための基礎概念
第2章 学習者に資するための5つの提言
第3章 小テストの作成
第4章 定期テストの作成
第5章 入学試験問題の作成
まず,『英語テスト作成の達人マニュアル』という本書題名,ならびに本書目次から連想される“英語教員お助けブック”というよりはむしろ,テスト作成の原理的な機構を説明し,改革を提言している(どちらかというと啓蒙書というより)研究書。むつかしい新書という感じ。私は本書(題名)にいい意味で裏切られている。刺激的で面白かった。提言は5つあるが(47頁に一覧表がある),100点満点で出題される英文和訳込の総合問題から脱却し,基礎的な知識を問う英文英答問題へと転換せよ,という趣旨。問題用紙(および解答用紙)も,B4の二つ折り(B5の大きさ)からA5くらいの大きさにまで拡大せよという提言まであって(これは五大提言の中には含まれない),なかなか徹底している。著者のいう“一覧性”はとても大事だ。手軽に応用できる実用性もあって本書はなかなかよい。
最大の違和感を覚えた点は,やはり著者の眼目=英文和訳廃止論で,私としてはやっぱこれは捨てがたい。英語がいくら読めて理解できたとはいえ,それが日本語として表現・伝達できなければ,言語の社会性は破綻する。英語を通じて日本語の本質に理解が及ぶという副産物的効果もある。英語で国語を勉強するという効果は,私としては捨てがたい。
じつに枝葉末節でどうでもいいが,「トレードオフ」とは二律背反関係を意味する。したがって,同用語についての46頁での説明は,間違い(でなければ,日本テスト学会でしか通用しない隠語)。(945字)
実践的で説得力に溢れた本
「テストのために学習者(生徒)は学習する」という現状を逆手にとって、「テストの準備(学習)=受験者の学力の伸長」とさせるための出題のアイディア等が満載。最初の方はテストに関する理論的な内容なので、私には少し難しい部分もあったのですが、読んでいてまさに目から鱗が落ちる思いでした。この本はテスト作成時の小手先のテクニック紹介ではありません。テストによって(正確にはそのテストのための学習をさせることによって)学習者の英語力を向上させることがねらいなので、当然ながら「普段の授業でそういう練習をしている」ことが前提です。
本日から定期考査が始まったのですが、まずは考査後の自分の授業を改善しなくては、と次回の授業に意欲がわいてきました。ただ、複数の教員で教えている生徒たちへの共通の出題としては現実的に難しい部分もあるので、教える側の共通理解が不可欠に思います。