知る人ぞ知る名著
数年前、佐々木先生の授業を初めて受講したとき、先生自身が半ば自嘲気味に「眠れない夜にどうぞ」と本書を紹介するのを聞いてから、一体どういうことかと訝っていたが、後日本屋でこの本を開いてみてようやく納得したのを、いまでも覚えている。その書面は黒と赤の二色刷りで、細かい字がぎっしり詰まっていたのだった。いやまったく、これは下手な覚悟で手を出せばアスピリンなんぞよりも強い睡眠作用を得られること請け合いであろう。しかしながら、私はここで本書の催眠効果に敬意を表して星5つをつけたわけではない(わかっているだろうけれども、念のため)。
本書の特筆すべき美点は、その執拗と言えるまでに詳細な解説にある。わけても時制と助動詞の解説は素晴らしいの一言に尽きる。それに佐々木受講者にはお馴染みの「思考・認知・告知(本書では告示となっている)動詞」による節の判別など、この一冊には英文を前から読むための読解原則が高濃度に凝縮されているのである。
ただ残念なのは、名物のダジャレが入っていないこと・・・ではなく、関係代名詞・関係副詞の解説がカットされていることで、以前先生にその不平を漏らしたところ、先生も困ったような顔で「実は原稿は書くつもりだったのだけど、ページ数の都合上載せられないと言われてしまったんだよね」と、ちょっとした裏話を聞かせてくれたことがあった。
だが、そうした多少の瑕疵はあるにせよ、決して本書の美点が損なわれるわけではなく、受験生に限らず幅広い層の英語学習者を導いてくれることは確かである。かくいう私も本書と先生の授業のおかげで、晴れて第一志望校に合格することが出来た人間のひとりである(偶然にもそれは先生の母校であった)。著者は本書がすべての英語学習者の福音書になることを願って、原稿を書いたらしい。
本書が福音書になるか、睡眠薬になるかは、ひとえに学習者の取り組みにかかっている。願わくば遍く読者にとって前者となることを祈りつつ、ここで筆を擱くとしよう。
英語の基盤を磐石にする「隠れた名著」
この本はまさに、英語を得点源にしたい受験生が、その基盤を磐石なものにする「隠れた名著」と言えるでしょう。文法項目のすべてについて解説がなされているわけではありませんが、依然、情報量が多く、ハイレベルなので、基本的な勉強が一通り済んでから使ったほうがより効果的かもしれません。ただ、それだけに残念なのは、巻末に索引がついていれば、使いこなすうえでもっと便利だったかもしれない、という点です。