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失われた時を求めて〈1 第1篇〉スワン家のほうへ (ちくま文庫)

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失われた時を求めて〈1 第1篇〉スワン家のほうへ (ちくま文庫)の商品レビュー

5.0 大人の世界
学生の頃、一度トライして、ドロップしてしまったこの『失われた時を求めて』‥フランス文学は、読みやすく、楽しめるものが多い中、この小説だけは、何かフランス文学史上、秘め事のような、特異な存在だ。その第一巻を、35も越えやっと完読。しかも、ほぼ一年間、費やした。というのも、この小説、やはり非常に難解で、読むのに神経をすり減らす。そこで私は、中休みをとり、途中、他の本をつまみながら、読み終えた。が、まさにこの小説は、このように、ゆっくり何年もかけ、ライフワークのようにして、だらだらと読み進めて行くものなのだと、読後、気がついた。そして、そのような読書スタイルこそ、19世紀〜20世紀初頭風なのだと痛感した。バルザックしかり、ボーヴォワール、サルトルしかり。忙し過ぎる現代生活では、とるのが非常に難しいスタンスだが、可能な人にだけ、特別にフランス文学の神秘が明かされる、これはそういう作品です。時間と根気と心のゆとり、それから、ある程度の年齢に達していて、ヨーロッパへの飽くなき憧れを持っているそんな方には、ぜひ!
5.0 意識の流れに身をひたす
マルセル・プルーストによる大長編小説。第一部「スワン家のほうへ」は、三つの部分からなる。第一部「コンブレー」では、主人公が幼年時代を過ごしたコンブレーの思い出が主体となり、寝る前の母のくちづけ、家政婦フランソワーズのマドレーヌの香りとコンブレーの連想、コンブレーの日曜日、そして、メゼグリーズとゲルマント二つの方角への散歩の四つの主題が語られる。

第二部「スワンの恋」は、時代が15年ほど遡り、エレガンスの権化であるスワンが、ココットのオデットに熱を上げ、遂には結婚するに至るいきさつを紹介する。

第三部「土地の名、――名」では、いくつかの土地の名の連想から、旅行に出る計画を立てる少年時代の主人公がいるが、健康上の理由から医師にとめられる。仕方なくシャン・ゼリゼに遊びに行った彼は、スワンの娘ジルベルトと知り合いになり、恋に落ちる。そして、今に時代は移り、主人公は昔を振り返って、時の流れに愕然とする……。

この長大な小説のエッセンスを一言で要約するのは不可能に近いです。話の筋の進行とともに、要所要所で主人公の回想や、事態に関する詳細な分析が入り、その組み合わせの独特なバランスの上に、全体が成り立っているからです。強いて言えば、タイトル自体にエッセンスがつまっているように思います。それなりに裕福な家に生まれ育った、身体の弱い一人息子が文学に目覚めていく、その歴史をつぶさに見ていく、というところでしょうか。

私自身は、プルーストの、人間観察眼の鋭さ、また、意識の流れを徹底的に追う、その緻密さに惹かれました。一つの感情の動きを、その微細な原因にいたるまで、何ページもの情報量を割いて、徹底的に見つめぬくスタイルは、この小説ならではでしょう。主人公の意識の流れに身をまかせ、彼の感情の動きに同化して読んでいくと、百年前のフランス人と、現代に生きる自分の意識がシンクロする、そんな書物です。
5.0 評判は無視して、自分の感性で
 好き嫌いを超えて名作であることは間違いありません。全巻読破せず、途中でやめても大きな問題はありませんが、最後までそれなりの水準を保っています。

 この小説の中では、まともな人は主人公の祖母と母だけで、後の人々は主人公も含めて、卑小な名誉心や、浅はかな知恵に基づいたうぬぼれなど人間の欠点とされるものをたっぷり持った人たちが大多数を占めています。
 そういう意味では、途中で辟易することもあるのですが、主人公もまた卑小な人間であることがこの小説の醍醐味でもあります。浅はかな心の動きを実に丁寧にプルーストは表現しており、人の心理を知る上でも重要な作品です。

 主人公の目を通すと、イマイチな(結局は浅はかな)人のように書かれてしまっていますが、スワン夫人の娘のジルベルトは、この小説の登場人物の中ではセンスがよく感じられます。

3.0 難行苦行を超えて得られるものは・・・
 星三つはかなり変わった評価でしょう。

 まず最初に、わたくしは「紅茶に浸したマドレーヌ」を想像すると、「べちゃべちゃしていて気持ち悪そうだなぁ」という感性の持ち主なので評価は割り引いてご判断下さい。
 石原千秋流にこの小説を要約すると、「ニートが小説家になれたことを証明する物語」ということになるでしょうか。主人公は働きもせず、口だけ小説家になるなると言っては、音楽や文芸、美術に対する鑑識眼をサロンで競い、漁色に走るという、現代の眼から見れば実に鼻持ちならない没落貴族です。要するに、小説を完成させる前の主人公は、働きもせず、かといって自己教育もせず、先祖伝来の田畑に徒食して生き、自意識ばかり過剰な、まさにニートなのです。この主人公に共感しつつ読むことはかなりな努力を必要とします。また、文体は説明的で、訳者はかなり日本語になるように句読点を補ったということですが、だらだら長く平板です。これは原文がそういうスタイルなのでしょう。
 ようやく最後の章になって、どうしてこれほど筆者が長い物語を必要としたのかが明かされます。つまり、最終章までがんばって読まない限り、この小説はまったく意味がないと思われます。
 この小説はフランス語圏に限らず、ひとつの教養となっていますので、一度読んでおくと、他の作家の作品を読むときに「シャルリュス? ああ、このひとゲイなのね」というふうに理解が深まるので、一読をお勧めはしますが、この長大というより冗長な作品を二度読む機会はたぶんもう訪れないような気がします。

 ひょっとしたら抄訳がお勧めなのかもしれません。

5.0 最高の傑作
これまで読んだ本の中では最も衝撃を受けた作品だと思う。
記述が詳細にわたりすぎ、ほんの数十分を描くのに数百ページが割かれていたりして少々間延びする部分もあるものの、そういった冗長さをすべてふきとばしてしまうような思索、洞察のきらめきがちりばめられている。中でも最終章の「見出された時」は絶品。話の内容をそれほどないが、時や死をあつかったプルーストの思索の数々はこれまで読んだどんな小説や思想書よりも衝撃をうけた。少しでも同じような思索ができれば世界は恐ろしいほどに豊穣に変化するのではないだろうか。

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