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ベスト・オブ・ドッキリチャンネル (ちくま文庫)

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ベスト・オブ・ドッキリチャンネル (ちくま文庫)の商品レビュー

4.0 聞くだけならまァいいか
 製造物責任とやらの時代であるから予め一言お断りしておかねばならない。森茉莉の「テレビ評」である本書は決して上品ではない。悪口は言いたくないが、聞くだけならまァいいか、という人にはお薦めできる。これだけ悪口を並べたてるということは、森茉莉は人生を肯定し、人間に深い関心があったということなのかも知れない。

  あのもみあげを長くした田中邦衛は300年続いた西班牙(イスパニア)の貴族の、血族結婚のために頭の悪くなった城主に仕えているソメリエ(酒の係り)で…

 このように 森茉莉の形容は実に巧みだ。
 悪口ばかりではない。
 桃井かおりを高く評価する。また、大川橋蔵には明神下!!! 銭形!!! 平次!!! と三連の感嘆符を使って声をかける。映画『太陽を盗んだ男』の沢田研二を大いに褒める。
 この改行の少ない、370ページの悪態を最後まで読むのは大変である。これがダイジェスト版(中野翠編)なのだからおそろしい。私は一気にではなく、十回くらいに分けて辛うじて読んだ。ともかく全ページ読んだ。読んだ本人が言うのも何だが、この本を最後まで読み通すことのできる人は偉い!!!
3.0 ダイジェスト版はだめだ。
編者の中野翠があとがきに書いているとおり全集のを読むべきだろう。やはりダイジェスト版ではだめなのだ。あくまでも中野翠の選択した文章だけを読まされるからだ。しかもこういう時評は連続した時間の経過の上に書かれる。週間新潮に連載されていたのだから週一のペースで書かれている。飛ばしちゃだめだよ。全部読まなきゃ。全集のを読むと著者の生活態度やその日の気分がよくわかる。調子の善し悪し。筆の進捗具合等々を読むのがおもしろいのだ。
2.0 知らない人についての論評。
同著書の「贅沢貧乏」が面白かったので、続けて読了。
しかし。
知らない人についての論評ってつまらない。
あたっているのか、そうでないのかもわからないんですもの。
こういうのはリアルタイムで読まないとダメですね。
4.0 悪態芸術
 内容は大きく3つに分類できる。ひとつは、1979年から1985年までの、テレビで活躍していて、森茉莉の目にふれ、嫌いなタレントの烙印を押された人たちへの過激な批評。もうひとつは、その逆の、当人を有頂天にするようなあでやかな称賛。のこるひとつは、森茉莉の過去の水際立った再現。いずれにも共通するのが、無垢と、純真と、うぬぼれと、傲慢が綴れ織りになった、圧倒的な文章力だ。

 この三つのなかでもっとも人目をひくのが、華麗なる悪口の数々で、解説の中野翠は「悪態の芸術的完成度」などという言葉を使っている。ちなみに、この本は中野翠の編集で、中野翠ときいてぴんとくる読者なら、まず買って損はない。

 俎上にあげられた岩下志麻やいしだあゆみ、竹村健一、小朝、木元教子、その他もろもろのみなさんには悪いが、まあ、ほんとうにすごくて、ぐさぐさと喉元につきささる。○○さんを俎上にあげたときの文章なんて、わたしが○○さんだったらドスをのんで殴り込みをかけるか、頓死している。(引用したいところだが、あえて自主規制。88ページの8行を本屋で立ち読みするなり、この本を買うなりして下さい)。

 しかし森茉莉さんも、ボロアパートから少しはましなマンションの住人になったとはいえ、半開きの口のまま、死後数日たって発見されて今は亡い。「バカの上にバカを何枚上のせしても足りない、形容に絶するバカといえるだろう」というような悪態に喝采をおくっていたのだが、森茉莉の華麗な文体は、ある意味で虚構のなかでこそもっとも美しい。そのためにも、ここに名前の出たテレビタレントがすべて亡くなってしまったとき、この悪態芸術の素晴らしさはいよいよもって輝くような気がしないでもない。

 と、ここで終わるつもりだったが、欲求不満が残る。なんてったって、ああた、この絶妙華麗な人物描写をひとつも紹介しないで、なんの書評よ、てなわけでして。そこで選んだのが、森茉莉さんごひいきの、長嶋さんの監督時代のベンチでのスケッチ。

【負けてくると、中学生の男の子が降誕祭(クリスマス)に万年筆を買ってくれると約束した叔父さんが、それを忘れたと言った時にするような顔をする。勝ってくると唇を一文字に結び、腕を組む。そうして(うん、いい。)という表情をする。】

 この絶妙な比喩。当時の長嶋さんを知っている人は、うんうんとうなづいてくれるのではないか。

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