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憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)

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憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)の商品レビュー

4.0 論理的だけれど
なぜ立憲主義が必要で、その立憲主義と両立できる安全保障制度とはどのようなものかを問う本書は、立憲主義の意義を説くことをメインとするもので、立憲主義と平和の関係をめぐる問いは、その応用問題ということになります。平和主義を扱う本のうち、本書のように立憲主義に紙幅を割くものは、そうは見かけません。まず民主主義について、長谷部教授は多数決という制度に遡ってこれを論じ、民主主義によって決定すべきでない事柄を明らかにします。社会全体として統一した結論を出すべきではない問題があるという前提に立ち、そのような問題については民主主義という枠組を排除するものとして、立憲主義が描かれています。立憲主義の内容と役割は、比較不可能な価値が共存しうる社会を作ることだと整理されます。そこで、公私の区分という手法によって、民主主義で対応すべきなのか、それとも立憲主義で対応すべきなのかが決定されるということになります。平和を維持するための方法として考えられる複数の方法について、それぞれ方法の主張者が暗黙の前提とする国家観・戦争観と方法との整合性、そして立憲主義との整合性が論じられていきます。結論として、本書は自衛のための実力組織を保持することを完全には否定しない選択肢を採用し、これを「穏和な平和主義」と呼びます。憲法第9条は、合理的自己拘束という観点から評価されることになります。民主主義による決定では、社会全体の利益に適うための条件が欠けるので、不合理な結論になる危険があり、あるいは各国が独自に軍備することは,軍拡競争を招くという予想などから、憲法9条による規制が不合理な決定の可能性を根本から否定して軍拡を抑制する役割を担うというものです。非常に論理的でたしかにそうだなあと思わされてしまったのですが、読了して一抹の寂しさを覚えてしまったことも否定できません。東大法学部の憲法学者が自衛隊を合憲だと主張することは、私がこれまで読んできた憲法学者の書籍からすると意外で、時代も変わったのだなあと思わされてしまいました。これが今の最先端の憲法学説のようですし、現実的な理論の需要があるということなのでしょう。
 
5.0 なぜ憲法を守ることが平和を導き出すのか、原理的な回答を冷静に議論する日本人必読書
憲法を少し勉強すると「立憲主義」という言葉に出会う。賢い受験生は「国家権力を制限し、広く国民の自由を保障する考え」と丸ごと暗記する。本書は、そんな東大「予備校」から機械的に官僚を産出するための本ではない。なぜ「立憲主義」という考えが生まれたのか?戦争と平和の関係にいかなる影響を及ぼすのか、さまざまな考えを持つ人が平和に共存して社会生活を営む基本的枠組みとは何か?について、深く怜悧で緻密な議論を展開する本である。憲法についての世界に誇る書物である。軽薄短小なお手軽憲法論がバカ売れし、国民もそれに浮かれているかのようであるが、今一度冷静に戦争、平和、憲法との関係について、本書のような透徹した論理を基にした議論を家族やサークルで共有して議論の叩き台にしていただきたい本である。友人にも是非お勧めして欲しい。ちなみに、憲法9条の政府見解は「個別的自衛権は許容されるが(自衛隊は合憲)、集団的自衛権は許されない(アメリカのお供で自衛隊を派兵することは違憲)」という立場であり、長谷部教授もその政府見解と同じ結論を緻密な議論により導き出す。9条=自衛隊違憲と勘違いされている方は、誤解を改めて欲しい。
5.0 しっかりとした論理の憲法解釈
この本は「平和」より「憲法」の方が主ですね。
九条は最後のほうで、なぜ立憲主義を取るのか、そもそも憲法とはどういうものなのか、などをきちんと説明している本である。

私は九条改正派だし、著者の護憲論には若干疑問があるのだが、それでも護憲派の著者の論は聞くに値する。
立憲主義、民主主義という、論議の土台になっている部分から問い直し、考えを構築していく。憲法学内のホープと言われているだけある。


以下は著者の九条論

著者は、まずゲーム理論により軍事的空白は戦争を誘発することを指摘する。
また、軍隊によらないパルチザン的な抵抗は、軍人と民間人の峻別を不可能にし、戦争を際限なき地獄へと至らせる。
その上で、九条は準則ではなく原理としてとらえるものだとする。つまり、例えば「表現の自由」が認められているからといって、他者の名誉を傷つけたりプライバシーを暴露するようないかなる表現も認められているわけではない。「表現の自由」を憲法改正することなく、プライバシーの権利を認めさせることはできる。同様に、九条も平和主義という一定の方向を示したものであって、文字通り「すべての」軍隊を禁じているわけではなく、自衛のための戦力は認められているとする。
そして、自衛力を持つためならば九条を変える必要はなく、むしろ諸外国に余計なメッセージを与える可能性があるため、改憲の必要はないとする。

ただ、私自身は九条解釈は著者のが妥当だと考えられるが、それによる護憲へはある一つのハードルがあると考える。
それは、すべての人が著者のような九条解釈を行う必要があるということである。
つまり、憲法上は自衛力は認められているが、国民の多くが誤解してそう思っていないならば、政府が自衛力を行使したときに国民の批判が高まり、本当は行使できるはずの自衛力が行使できない、またはしづらい状況になる、という可能性が大いにある。
そして、現在でも自衛隊を意見だとする政党が国会の議席を占めており、下級審とはいえ一度違憲判決が出たことがあるという現状を考えれば、そうした可能性への危惧は決して杞憂ということはないだろう。
著者は「憲法解釈を最終的に決めるのは憲法学者」と予防線を張っているが、政府が見るのは憲法学者の意見ではなくて国民の意見である。なので憲法学者がお墨付きを与えても、政府は国民の意見を聞くよりほかない。
ゆえに、現状のような誤解の多い九条は、いざというときに足を引っ張る可能性があり、変える必要がやはりあるといえるだろう。


九条論議に興味がなくても、憲法に興味があるのならオススメです。
5.0 立憲主義
立憲主義を元に日本国憲法について考察していくのが本書である。ただ著者
の「立憲主義」の使い方と巷の凡百の憲法学者との使い方には相違が相当
程度あるので注意が必要だ。自然権というものについて決して自然な考え方
ではないと述べた上で、「人が人であること自体によって、自由で平等だと
考えることが、人のありのままの自然の傾向であるかも、おおいに疑わしい」と述べる。
穏健な平和主義への選択肢として5つを挙げ、1つ1つを考察していく部分
を見れば著者の論理的能力にうならされるであろう。
5.0 憲法と平和を理性的に論じる視座を提供する
憲法と平和を論じる上で理性的な議論の視座を提供する良書。
 なぜ多数決か、なぜ民主主義かから話が始まる。そして、立憲主義が民主主義とは緊張関係にあることを明らかにする。
 「民主主義にもとづいて行使される国家権力でさえ制限されるという点に、立憲主義の強みとその謎がある」(13頁)
 立憲主義を、比較不能な価値を奉ずる各人が、それでも社会として統一した決定を導出するための、公私をわける極めて人為的な装置、と位置づけ、我が国の平和憲法との関係を探る。

 憲法典は、準則ではなく原理であるという考えから、必ずしも文言に厳格である必要はない。事実、表現の自由や政教分離規定は言葉通り厳格に解されていないし、それで妥当である。だから、9条は現実に即していないと批判する人々は、9条のみは厳格な文理解釈をするべきという何らかの特殊な前提をおいている。一方、絶対平和主義はそもそも立憲主義と整合しない。なぜならば、警察力と人民による抵抗で国の脅威に立ち向かうことは、公私の境界をなくした戦争=地獄理論と親和するからである。結論として、穏和な平和主義を提唱する。長谷部教授の著作の入門的な本でもあり、憲法改正議論が盛んな今こそ、「理性的な議論のために」もおすすめできるだろう。なお、法学教室2005年10月号30頁とあわせて読むと面白いと思う。

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