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八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学 ちくま新書 (544)

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八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学 ちくま新書 (544)の商品レビュー

4.0 メディアが作る国民史
「言論統制」を読んで著者のファンになり、2冊目として購入。期待に違わない良著だった。特に圧巻なのは序章と第1章。戦前の国民史が国家によって作られたように、戦後の国民史はメディアによって作られてきた。その過程が、まるで推理小説のように解明される。これに対し第2章と第3章は、学術論文をベースとしているだけに、緻密である反面、読み物としての魅力はやや落ちる。それでも、全体に丁寧な造りで、得るところの多い一冊である。
4.0 記憶と忘却の相互作用
メディア研究に明るくない私にとって、本書は新書ながら中々読みにくいものであった。
しかしここで明らかにされている「玉音写真」の捏造には驚かされた。
たとえば1946年8月16日の『北海道新聞』に掲載された頭を垂れる少年たちの写真は、
写真家たちがポーズを取らせて撮影したものだという(24、29-32頁)。
また、天皇の詔勅のニュース解説記事と並置された、いわゆる「玉音写真」は、
実はそれ以前に戦意高揚の記事のために撮られた可能性があると著者は示唆している(50-51頁)。

写真や映像など、人の視覚に訴えかける媒体は、それを見た人に大きな印象を与えるだろうが、
それに意味を与えるテキストもまた非常に重要だということを改めて認識した。
われわれがメディアから受け取るニュースは「創られた」ものだということについて、
考えさせられる一冊である。

「8月15日終戦」という「記憶」の定着が、国民のどのような心性とかかわりがあるのかということについては、議論の余地がある。
というのも、その点については実証がほとんどなされてはおらず、
「何となく」理解できる程度のものだからである。少なくとも私にとっては。
しかし、メディアによって繰り返し再生産される典型的な「語り」は、意識的・無意識的に関わらず
国民的な「記憶」となって定着していくという根本的なテーマからは学ぶところは大きい。
記憶の風化を嘆き、恐るがゆえに、そうはさせまいと「語り」を再生産し続けるメディアに対する著者の批判は正しい。

「確かに、新聞やテレビは八月に「体験の風化」を語り、「世代の断絶」を憂い続けてきた。
……[しかし]「八月ジャーナリズム」の目的が「語り継ぎ」にあったとしても、
その定型化された機能―あえて神話化と呼ぶ―は「忘却」へ補助線を引くことではなかったろうか」(258頁)

記憶と忘却は表裏一体なのである。
5.0 オススメです。
教育現場で読まれて欲しい本です。物の見方や資料調査のあり方まで学べる素晴らしい本です。このさい著者の主張は目をつぶりましょう。

詳しい内容は述べません。ぜひご自分で手をとって読んで欲しいと思います。

八月十五日について考えるときに欠かせない1冊だと思います。
5.0 8月15日の神話を解き明かす
玉音放送を聞いてほとんどの国民が涙を流したのか、8月15日が終戦記念日として相応しい日なのか、の二点を再考しているだけでも、私は本書に高い評価を与えたい。1945年8月15日を実際に知っている人たちが大勢生存している段階から、1945年8月15日を実際に知っている人たちによって8月15日の神話が作られてしまったことが明らかになったわけである。この神話を解き明かすことが出来れば、これ以外の神話も解き明かすことが出来るかもしれないし、神話によって現実を見誤ることを防げるだろう。少なくとも、終戦という言葉から、皇居前で土下座をし天皇に詫びる人たちをイメージすることぐらいは避けたいものである。
3.0 しかし、新聞で話題作扱いされるところが、本書の限界かも…
 たしかに国民は8月15日の玉音放送を聴いた。だが国民的記憶としての八・一五玉音放送体験は、メディアの創作物でしかない(p146)。そしてこの捏造は、サンフランシスコ講和による日本再独立を境に始まる。著者はそこに、敗戦の事実の否認を見る。「玉音放送が伝えた『終戦』は、公式文書の『降伏』を国民体験の記憶で覆い隠してしまった」(p125)。著者曰く「記憶の五五年体制」(p211)。
 新聞の玉音写真捏造。国民的に定着しつつあった新暦下の盂蘭盆会法要という「日和」の転用(?)。朝鮮戦争終結(1953年7月)の直後から始まるNHKラジオの本格的「八・一五終戦記念日」編成。義務教育における歴史教科書の翼賛。いずれも興味深い。
 当然の流れで、丸山真男「八・一五革命」説も神話として指弾される(丸山が1946年3月6日の憲法改正草案要綱発表から受けた衝撃を、1945年8月15日に遡及させて<起源>を偽造したという議論は、米谷匡史に依拠)。この神話が「革命=断絶」を強調する余り、戦前と戦後の連続性が見えにくくなったという指摘も、適切だと思う。
 ま、いろいろ気づきを与えてくれた本ではあるが、文句もある。場当たりに思わせぶりな仄めかしや留保がなされ、「要するにドーなのヨ!」と苛立たされる面も多々あった。例えばトルーマン演説と主婦之友社社長の訓話を引用し、9月2日を「感謝の日」として記憶していないのは「私たちが『軍国主義者たち』ではなくなったためか、あるいは『民族の真の屈辱』の中にいるためだろうか」(p82)と問いかけた、その問いは放置されたままではないか?
 加えて、これは趣味の問題かも知れないが、p130で「心に響いた句を二つ」と前置いて引用される句が両方とも読むに耐えず、著者への信頼感が薄れた。残念。

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