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国語教科書の思想 (ちくま新書)

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国語教科書の思想 (ちくま新書)の商品レビュー

5.0 道徳教育についても考えさせられる一冊。
小・中の教科書の作品・構成の検討を通して
国語教科書に秘められた「思想」を解き明かす書。

この書で述べられていることは、
・現在の国語教育で道徳教育が行われている。
ということ。
本文を読んでいくと、
作品がある特定の道徳観で選ばれていることがよく分かる。


レビュアー個人としては
国語の大半が文学作品の解説で占めているところに
危機意識を感じていたのだが、
この本の著者の主張は概ね合致するものであった。


もっともこの本は教科書分析から
論を展開しているので
本当にこの国語教科書の思想を
児童生徒が植え付けられているのか疑問の余地がある。
けれども、教科書の採択状況の偏りについても述べられているため、
この思想が国語の授業を通して
植えつけられている可能性は高いと思われる。



この書の直接のテーマは国語教育ではあるが、
個人的には、道徳教育を考える上でも有益な一冊だと考える。
3.0 批評精神
『PISAの「読解力」試験が求めているのは、端的に言えば批評精神なのだ。』石原氏も第1章でこう書いているので、この本もちょっと批判的に読んでみた。

氏は、この本の中で「グローバル・スタンダード」という言葉を使っているが、PISA2006の調査結果、読解力の順位を見ると、15位の日本に対してイギリスが17位、ドイツが18位、フランスは23位、イタリアは33位、ロシアは39位など、日本でもおなじみのこれらの国々は日本よりも順位が低い。PISAがグローバル・スタンダードなのだとすれば、これらの国々はグローバル・スタンダードではないということか。

また、氏は国語教科書における、人間以外の生き物を主人公にした作品の多さに触れ、「自然に帰ろう」というメッセージの方向性を導き出している。しかし、実際に図書館に行って児童用図書のコーナーを見てみれば、人間以外の生き物が登場する作品の多さがわかるだろう。では、我々は図書館からも「自然に帰ろう」というメッセージを読み取るべきなのだろうか。

これはあくまで一面的な見方ではあるが、PISAの結果に踊らされ、二転三転する教育界を見ていると、日本のこれからに不安を感じてしまう。

PISAで高得点をあげたフィンランドが教育先進国として取り上げられ、「フィンランド・メソッド」が一躍脚光を浴びた。実際に、フィンランド・メソッドを用いた授業実践などもあるようだ。しかし、2006年の結果では、韓国が読解力1位になった。では、これからは「韓国メソッド」が紹介され、脚光を浴びるのであろうか。

まとまらない文章になってしまったが、とにかく、石原氏も言うように、『批評精神』は大切である。様々な情報を批判的、客観的に判断し、自分の足元や行く先をしっかりと見つめながら歩いていきたいものである。
4.0 スタイリッシュな著者の熱い一冊
 テーマは「教科書は子ども達をどこに連れて行こうとしているのか?」。石原氏の「国語」関係新書の中では、最も「熱い」一冊ではないでしょうか? 
 そこで、思い立って大学のゼミの教科書に使わせて頂きました。章ごとに読み、ディスカッション。有り難いことは、本書を糸口にポストモダン思想の入門的説明もできることです。また、本書が扱っている小学校教科書、その市販問題集などとも、実際に付き合わせて読んでみました。いくつか「読み過ぎ」の箇所も感じられますが、「テクスト論」の冒険的実例であり、おそらく著者の意図によるものなのでしょう。
 最後にぶちあげている『心のノート』批判ですが、本書が言う「権利と義務についてのいかがわしい一文」が出ているのは、著者は『心のノート小学5・6年』とされていますが、正しくは『心のノート中学1・2・3年』でした。それはそれとして、『心のノート』と『心のノート 活用のために』を実際に購入して検証したところ、著者以上の怒りがこみ上げました。皆様にもお勧めします。
5.0 国語教育とはすなわち道徳のイデオロギー装置
小学校以来思っていた、国語教育における「いい子」的願望に対する嫌悪を、筆者がずばずば言ってくれるので、読んでいて楽しかった。
ただ、論理的かというとそこまで論理的ではない。どちらかというとエッセーか。

ただ、一つ納得できないのは、筆者はコンサバ(保守的)な教科書を批判したあとで、どちらかというとラディカルな教科書を取り上げて、どちらかというとそれを評価している。
だが、ラディカルなものも、それが広まってしまえば結局コンサバ的な押しつけに化してしまうと思う。
ラディカルだろうがコンサバだろうが、思想の押し付けはいやだな。ただ減点するほどのことでもない。
4.0 教科書批判を行なう本書自体も批判的に読めてしまうところが面白い
目次を見ればわかるように、本書は3章構成で論じられている。1章では「読解力」低下問題の表と裏を明らかにし、2章と3章ではそれぞれ小学校と中学校の教科書の教科書分析を行なっている。本書を通じて著者が主張するのは次の2点である。
1.日本の国語教育はイコール道徳教育であるということ
2.国語教育に「批評」という高度な精神活動を導入すべきであるということ
2章、3章の教科書批判では著者の批判の手厳しさに度肝を抜かれるが、1章では冷静な議論がなされているのではなかろうか。
現在の国語教育が変わらなければならないとするとそれはどのような点なのか。世界の国語教育の標準は何か。本書ですべてが解決されるわけではないが、よりよい国語教育を考える一つの視点となるだろう。本書を読むべきは大学生あたりであろうか。いや、中学生や高校生が読んで自分たちが受けている国語教育と照らし合わせてみても面白いだろう。メタ国語力とでも言うべき批判力が身につくかもしれない。

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