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萌える男 (ちくま新書)

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萌える男 (ちくま新書)の商品レビュー

4.0 「萌え」原理主義者の信仰告白
このレビューを記している時点(2009年2月22日)で27のレビューがありました
やや高い星数評価投票の傾向があると思いますが、1から5まで満遍なく評価があるようで賛否両論というところだと思います
強い共感も引き起こし、一方で強い批判も受けざる得ない、刺激的であくの強い書籍だと思います

私にとってはおもしろい書籍なのですが、星数で評価する段になると気持ちのまま「星5つ」と素直に投票できない事がつらいところです
以下にそれを述べたいと思います

☆☆☆☆☆ オタクとして非常に共感出来る節が多いです
具体的には、「もてる・もてない」という価値観に右往左往する人々に対する本田氏の批判や、オタクが持つ様々な疎外感、「萌え」として代表される「癒し」の存在は私も実感するからです
とにかく、共感出来てしまう部分が多くて一人でニヤニヤしたり苦笑いしてしまいます

★★ 「萌え」という不可思議な現象を純粋に知りたいと思って読んでも答えは見つからないと思います
一方で星数を低くせざるを得ない要素も多いです
先行レビューにすでにありますが、おおよそ理論の完成度が低いです
「現代社会論とジェンダー論、そして実存の観点から答える」
との説明ですが「学術的」には、理論展開の飛躍や偏りが多すぎます
「ファミレスで若者が語る具体性の無い将来像」という感じでツッコミどころが多すぎです
「学術的」という基準は大げさな言い方ですが、独りよがりを無理やり「理論」として語ろうとするので無理が生じていています
これでは、そもそも「オタク」や「萌え」にあまり縁がない人にとっては、述べられている事の意味が不明瞭ではないか、という恐れがあります

☆ それでも、この本が書籍としてISBNが登録され、(筑摩書房から)出版される事はとても刺激的な出来事です
本著「萌える男」は、「萌え」の信仰者(その中でも原理主義的と言える過激な一派)が、希望と絶望とエゴを切々と一般社会に告白した本なのです
ここで文体として現れているものは「信仰」を伝えるための器でしかなく、伝わるべきものは信仰への情熱なのです
共感できる者にとっては「パッション」であり、そうでない人にとっては「電波(よくわからない不快感)」でしかないのです
私は「パッション」を感じてしまうし、著者の本田氏(と出版担当者の方々)には拍手を送りたい!

(しかし、「萌え」の理想が実現してしまった社会に住みたいとは思いません。脳内と社会の狭間にあってこそ「萌え」は最大に効果を発揮すると愚考します)

「萌え」という現象は、偏見や嫌悪感または劣等感などに歪んだ虚像でなく、なんらかの具体的・社会的成果として実像を結ぶときが来るかもしれません
その日まで荒野を歩き続ける本田氏の足跡を辿る事で「萌え」の一端が理解できる、かもしれません
(「萌え」とは実像が結ばれるものでない、という結末かもしれません)

以上の複雑な内心を総合して
「☆5つ−★2つ=☆3つ。さらに、☆3つ+☆1つ=☆4つ。」
なので「星4つ」の評価とさせてもらいました

4.0 楽しめました
物事をオタク的視点から再解釈してみせる面白さでは、最近能力の衰えを感じさせる岡田斗司夫を上回っていました。
えっ?学術書じゃない?
当たり前でしょ!
3.0 本書は大手マスメディアに対するアンチテーゼである
人間長生きをするようになった。他人にあまり干渉しなくなった。家族や家制度、終身雇用が崩壊した。しかも持つべき宗教や哲学もない。その中で自分の想像力を駆使してオタク趣味に没頭できるのは素晴らしいと思う。恋愛や友情など他人との関係性が苦手な者は仮想現実などに喜びを求めるのは現実的な選択である。宗教だって現実には存在しない神を自分の頭の中に求めているだけなのだから。本書でも触れているがマスメディアは恋愛、友情、家族の素晴らしさ、地域社会の大切さ、仕事を通しての成長等他人との関係性を重視しすぎである。
それらを得られない人間は疎外感を持つだけではないか。本書はそのアンチテーゼであると思う。
5.0 恋愛からの逃走
オタクの出現理由を理論的に解説したなかなかの力作。ときどき勢い余って余計な
ことを言ってしまっているが、内容は充分評価に値する。恋愛の否定という発想は
かなり衝撃的である。

昔は結婚するのは自分の意思ではなく家や世間からの強制だったのだろう。それが
恋愛と結婚を結びつけることによって本人の自由意志で決められる時代になり、
恋愛結婚のシステムに変わった。そうなると結婚出来るかどうかは本人の恋愛能力に
依存することになり、もてる人ともてない人とに二極化することになった。そして
表面化したのが恋愛を拒否する人々である。以前から恋愛を嫌う人はいたはずだが
最近になって表沙汰になったのである。多くの人はまさか恋愛を嫌う人はいない
だろうと考えるが、恋愛力に個人差がある以上それを忌避する人がいるのは当然である。

何もこういう忌避構造は恋愛に限ったことではなく、いろいろな場面で現れる。
酒・タバコ・ギャンブル・車・出世など、以前ではみんなが嗜好していたものから
当然のように逃走しだしている。個人の行動が本人の自由選択によるものであれば
こうした構造は普遍的に見られるはずである。世間が好ましいと考える規範を嫌う人は
常に存在し、それが社会問題化することも多いだろう。自由選択は必ずマイノリティを
生み出す構造を示した点で本書の意義は大きいと思う。
3.0 意欲作である事は否定しないが
「萌え」という言葉が一世を風靡し、現在もそれは廃れることなく息づいている。

本書は「萌える男」自身である著者が書いた「萌える男」総論でもある。
「萌える男」とは、1980年代から1990年代前半のバブル景気(著者は恋愛が商品化された時代と称する)
においても異性から恋愛の対象とされなかった男たちが、概ねゲームやアニメなどの2次元の世界の
異性を恋愛対象として捉えている事に極めて肯定的な立場をとっている。

「純愛」という言葉が一つの重要なテーマとして持ち上げられているが、一夫一妻制が前提の社会において、
1人の人間が相手の理想に完全に答えられるはずがない事に「萌え」肯定の論拠を置き、
2次元の異性を恋愛対象とすれば脳内補完した上で自らにとって最も理想的な対象が存在する為、
妥協して軽々しい付き合いを行なう事のできない「純愛」を重んじる男たちにとって、
「萌え」は当然の恋愛表現であるという事になる。

ゲーム・アニメ等の具体的な作品を挙げ、図解によって読者に分かりやすく表現している事には共感がもてる。

ただ、後半になるといささか論理の飛躍が見られ、大多数の男が「萌える」事による
新たな社会形態が構築されるかのような表現には首を傾げる。

全体的には良くまとめた本であると思う。
しかし、作品一つ一つに対して「萌える」対象を求めるのは「純愛」なのだろうか。
電源を切ればリセットされる関係であるならば、あまりにも現実を知らないと言わざるをえない。

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