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持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想 (ちくま新書)

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持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想 (ちくま新書)の商品レビュー

4.0 得かどうかはわからない
この本の長所
現在の自由民主党政権が進めている、低福祉・低負担の対立軸になりうる構想を提示できているところ。今後は少子化もあるが、生産性の向上などもあり、労働力過剰になるのはやむを得ず、若年者の失業も恒常化しよう。そこで、若年者向けの基礎年金などのアイデアを出している。その他は本書をお読みください。なお、財源も提示できているが、私はそれが妥当かは確認していない。
この本の短所
この本の提案が得になるかは考える必要があろう(得でないと、読者の皆様には採用しにくいだろう)。消費税に比重を移し、所得税の比重を減らすことが得なのか(方向性はこれしかないのだろうが)、元若年者にとって納得しうるか、など。
結論―長所星5つ、短所で星1つ減らして、星4つ。
4.0 第3章が残念
全体的にはいい本だと思うのだが、第3章の教育論・若者基礎年金論の部分の議論が荒すぎる。
たとえば、戦後日本の教育学では「教育の機会均等」や「学習権の保障」という枠組みで、社会的不平等の問題に教育の分野からどうかかわるかという議論を続けてきた経過がある。また、教育福祉論という形で、教育と福祉、社会保障との関係を考察しようという領域もある。ところが、こうした研究には著者はほとんど触れずに(しかも、教育学関係の本は、巻末の参考文献を見る限り1冊だけ)、日本には教育の持つ「保障」機能に関する議論が全くなかったかのようなことを、同書第3章では述べている。
また、第3章で著者は若者(=著者のいう「後期子ども」)期への社会保障を論じているのだが、その意義は否定しないものの、その若者期以前の子ども期において、特に家庭間の経済格差などが生み出す社会的平等の問題については、ここでは何も議論がない。しかし、教育学や社会学の領域では、その子ども期の格差問題についての議論もある。
こうしたことから考えると、他の章の議論はまだいいとして、やはり第3章での著者の議論の荒さが目立つのである。
4.0 学術書というよりはむしろ
政策提言の書といえると思います。

筆者の『定常型社会』には深い感銘を受けましたが、この本は、そこからの新たな発展は、少なくとも個人的には感じられず、理論的には同じ話という印象です。この本の違いは、定常型社会を実現するための具体案を提示しているところでしょう。「若者基礎年金」などはその最たる例です。

この本でなるほどと思ったのは、日本の社会保障の特異性?でしょうか。日本人にとっては社会保障といえば老人のものと考えられがちですが、実は生まれてから死ぬまでが社会保障のはにであるという、当たり前の事実に気付かされるとともに、老人以外の社会保障がきわめて脆弱である日本の実態が良く理解できると思います。今日の格差社会を考える上でも、本書は貴重な視点を提供してくれると思います。
3.0 なんというか・・・
この本の基となっているプロジェクトに興味があって、購入して読んでみた。

少し残念だったのは、図表を使って色々と説明している箇所で、「えっそれだけの議論でその答えを出したの?」「この図表から、それだけの意味しか受け取らないで意見を述べているの?」と何度か感じたこと。本にある程度制約があると思うから仕方ないけど、説得力に欠ける。つまり、本を読んだだけだと、著者の意見に素直に賛同できない(特に社会保障論で)。

5.0 オルタナティブな社会像の提案―もうひとつの社会モデル

 私自身は…「環境主義(ないしエコロジズム)と結びついた社会民主主義」という理念が、これからの時代においていわば“時代の政治哲学”という位置を担い、日本におけるこの理念と政策の確立こそがもっとも重要な課題になると考えている―本書P.76

 当書を貫く主旋律は、上述の「エコロジズムと結びついた社会民主主義」の思想である。だが、この意想は、政治哲学としての社会民主主義の中に自由主義的な要素を取り入れ、本来の意味での保守主義にも親和性をもつ“新たな社会民主主義”であることが特徴だ。

 従って、具体的には、著者がコンセプトとして主張する「持続可能な福祉社会」を構築するため、「定常(環境)志向&(相対的に)大きな政府」という姿、米欧の対比でみれば「ヨーロッパ型」に重なるような、オルタナティブな社会モデルを私たちに提起する。

 「持続可能な福祉社会」とは、「個人の生活保障や分配の公正が十分実現されつつ、それが環境・資源制約とも両立しながら長期にわたって存続できるような社会」と定義されている。私たちの目指す「美しい国」とは、まさにこうした社会を基盤とすべきであろう。

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