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NHK問題 (ちくま新書)

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NHK問題 (ちくま新書)の商品レビュー

2.0 第1〜5章まではよかったのですが・・・
 巷ではNHK叩きの論調が下火になったかと思えば、新しい不祥事が発覚するとい
う泥沼状態といっていいでしょう。とかく感情的になりがちなこの手の題材に対し
て、著者は放送における公共性、放送ジャーナリズムのあり方を考察する上で、
NHKの誕生から現在までの歩みを客観的にたどる事から始めます。第1章より第5章
のNHKの歩みはコンパクトによくまとまっていると思いました。NHKのために時間を
使うのはもったいないので、情報量としては十分なのではないでしょうか。

 NHKの議論するに当たって「公共放送」「公共性」という用語が双方から飛び交
うのですが、著者はその言葉が、ゆるい定義に基いて使われるため議論がかみ
合わないといいます。著者は斉藤純一の『公共性』を引用しその意味合いを三つに
整理しています。[1]行政機関やそれに準じる公的(Official)機関が主体となって
関わるもの [2]全ての人間に関係するもの(common) [3]誰に対しても開かれて
いる(open) 筆者はこの三つの定義は周期の異なる波が重なったり、離なれたりす
る動の相違で捉えるべきだと主張しています。私は、現在のNHKは全ての構成員
(国民)の利益のためでなく、NHKという組織のために公共性という言葉を使って
いるように思われ、またNHK内の議論が必ずしもOpenでないことから、NHKは実質的
に公共性を失っていると考えています。

 そして第6章が本書の考察部になります。しかし残念ながら本章に入ると見る間
に勢いを失ってしまいます。彼の解決策は観念的で、具体的なイメージがわきませ
ん。ロールズの『正義論』を引いてきますがあまり適当でなかったように思いま
す。著者の放送に求めるマスコミュニケーションの公共性は、強者が弱者に情報の
ほどこしを与える上目線なのも気にかかりました。多くの文献に当たり、現状分析
をしている第1〜5章はよかったのですが、本章の考察はやや唐突で,寄せ集めた
理論を当てはめている、大学生のレポートのような印象を受けました。
2.0 書きたかったのはコレなのか
仕事柄、ちょっと興味を持ったので読んでみた。
テレビの黎明期から現在に至るまでの歴史は、
けっこう裏話的な話も多くてサクっと読める。

でも、作者の言いたい事は、たぶん最後の章に
全てが凝縮されていたんじゃないだろうか。
この章だけで本にしたかったが止めたのか、
止めざるを得ない理由があったのだろうか。
だから、最後の章はそれまでの5章分に比べて、
とても濃い。 もう、濃すぎて疲れてしまう。
自分が不勉強なせいもあるんだろうけれども、
わからない用語が唐突にでてきてしまったり。

全体として、アンバランスな感じがしたので星2つ。
1.0 一般向けではない
 まず冒頭の「定義?」で述べられるように、著者は「定義があまりにもゆる」いものに嫌悪を表している。
 その点でいってもこの本が一般向けに書かれていないことがわかるだろう。
 既に述べられている方もいる通り、ロールズや中井正一(・・・)、ローティ、ハーバーマスなど盛り沢山である。
 その後放送ジャーナリズムについて考えてみようという言葉にもある通り、NHKに限られた本でもないしメディア史の方に視点がずれていく。
 後半では政治哲学についても述べられているので、タイトルはメディア政治哲学がよかったか。
2.0 小粒ながらもピリリと辛い。
 新書だと侮るなかれ。コンパクトなボリュームの中で、
昨今のNHKをめぐる諸問題を、縦横に論じて読み応え
がありました。使用しているキーワードは、論理の自己
疎外(竹内成明)、虚言(中井正一)、ずれ(三木鶏郎)
から反照的均衡(ロールズ)や公共性の構造転換(ハ
ーバマス)など多種多彩で、これらで展開されるクリテ
ィシズムはいずれも示唆に富むものでした。
 因みにわたしが今のNHKに感じる疑問は、相撲や
大リーグなど自らが放映権をもつ競技の話題のみを
スポーツニュースで流すことです。これは無論、メジャ
ースポーツの放映権を民放に囲い込まれた結果なの
ですが、民放を追従するだけなら能がないでしょうに。
本書の記述に沿って言うなら、民放のホテリング効果
(標準化)を補うイノベェーション(革新)という公共放送
の役割に逆行するものといえるのではないでしょうか。
3.0 「NHK」って「平和憲法」「天皇制」同様、いかにも日本的な存在
 「NHK問題」とは広く「公共性」と「ジャーナリズム」の問題である、ってのが著者の見立てだ。だから、狭義的、近視眼的にNHK問題を捉えていると、章ごとが一見脈絡なく、あっちこっち話が飛んでるように見える本書の展開には戸惑いを覚えるだろう。実際引用が多く、ツギハギ感もあり、著者の本意とするところが見え辛い部分もある。「おわりに」で「『ずれてゆくリベラル・アイロニスト』は筆者の個人的なロールモデルでもある。というわけで、まっすぐで硬い公共性論、ジャーナリズム論からは、ずれなければならないと思っている」って書いている著者なので、さもありなんだし、「ずれてゆくリベラル・アイロニスト」ってのは、「偽満州国論」「『隔離』という病い」「『核』論」「戦争報道」という一連の著作を貫く武田徹の魅力でもある。
 僕自身は「NHK」って存在には「平和憲法」「天皇制」に近い、いかにも日本的なニュアンスを感じている。矛盾を抱えているのは誰しも承知しているのに、曖昧なまま存在させ続けるという点において。そしてNHKに対して僕は肯定的だ。NHKって天皇制、平和憲法同様、日本人の楽観性の象徴で、そこにこの国の可能性があると思うんだよな。梅木達郎の「支配なき公共性」からの引用、“支配せず、支配されない立場”、凡ての人がこうなれたら凄いし、その可能性って、アメリカや、勿論社会主義なんかより、NHK的、日本的なものの中にまだしもあるんじゃないかって“楽観的に”思う。すっごい瑣末な話だけど、「あるある」と「ガッテン」のつくりの差異ってあると思うんだよね。
 脇道に逸れるけど、保険加入者の早逝を回避する施策としてラジオ体操に着目した戦前の簡易保険局の挿話って、厚労省のメタボリック・キャンペーンにそっくりで面白かった。

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