恐るべき高校教科書
フランスのリセ(高校)では哲学を修めることになっている。当然、試験に出る。日本における倫理政経といった半端な科目の比ではない。そこで使われる哲学の教科書を邦訳したものである。フランスの高校生は恐るべし、と一読して思ったものだ。が、蛇の道は蛇。高校時代をフランスで過ごした奴によれば、入試対策用のテクストもそれなりにあるそうな。さておき、認識と行動に大別される。まあ平たく言えば理論と実践というわけか。哲学の学説をギリシアから延々と説く、というスタイルではないところが面白い。哲学の重要なトピックに関し重要学説を踏まえながら解説。独断的にあれこれ論じるのではなく、見解の分かれる論点には必ず反論を記載しているところが教育的か。
哲学の入門書として、日本人が読んでも十分役立つ。一巻目は中村雄二郎翻訳で一部信頼に欠けるが、さして気にならない。一つの語の異なる意味が哲学的にどういう意味を持つか、フランス語の文脈にかなり依存しているのは無理もない・・・か。「使える」哲学教科書の出現が、日本語の文脈においても望まれる。
なぜ、哲学が必要か
正直、レビューを書くのに、本書の前半しか読んでいない。そこでこと前半部に限っていうと、哲学がなぜ必要かを理論的に納得させてもらえるという意味で、大いに参考になる。
哲学というと、考えてもしょーもなさそうなことをウダウダと考えてるオタッキーなイメージを持つ人もあろう。しかし、哲学とは本来そういうものではない。自然科学、文学、心理学などとともに、世の物事の原因と結果を研究する学問なのだ、と思う。そして、心理学も自然科学も文学も拾えない分野を、哲学は担っている。
「なぜ、なぜ」と問うていく姿勢は、学問として他の分野と変わるものではない。それが、人の認識と行動を中心にすえた分野が、哲学のフィールドである、と思えた。