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「少女マンガ」というカテゴリーの成立とその展開を、絵の文法から、ストーリーの構造から、 出版事情から、多角的にかつ丹念に追いかけた一冊。 本書の範囲は、少女マンガ成立以前、つまり戦前の少女雑誌時代から原本の出版された 1980年まで、重点的に扱われるのは戦後からの30年程度。しかし、巻末に付された年表を 見てみれば分かる通り、洪水のような資料の中から、通史的に少女マンガをめぐる物語を 紐解こう、というのだから、つくづく途方もない仕事だ。 そうしたわけで、そのターニング・ポイントとして高橋真琴、水野英子、萩尾望都などの 人物が非常に重要だとは言っても、ひとりの作家、ひとつの作品に割ける紙幅は どうあがいても限られざるを得ない。 しかし、単なる固有名詞の羅列に留まることなく、その中にも唸らされるばかりの 優れた洞察が働いているからこそ、その説得力も読み応えも増すというもの。 個人的に印象に残った観察は『エースをねらえ』。一介のスポ根であることを拒絶し、 「ビルドゥングスロマン」としてひとりの少女の成長を描き切った、と看破した筆致たるや、 まさに我が意を得たり、と膝を打たされた次第。
現時点で唯一の少女マンガの通史です。元版が1980年発行ですので、扱っている範囲は1970年代まで。 個人の仕事なので「あれもこれもがぬけている」「これにページを費やしすぎている」といった部分はあります。このページ数ですべてをもりこむのはムリな話です。少女マンガをきちんと読んでいる人が書いた文章であるというのが大事で、35年分の少女マンガを全体を見渡しながら読むということを(多少偏りはありつつも)やってのけています。通史を書くためには必要なことですが、これをどれだけの人ができるのか、実際にするのがどんなに大変なことなのかを想像してみると頭がさがります。 ここから興味を持った人がより細部へ行くための概観はこの本で充分とれていると思います。ちょっと知りたい人が読んでも概要はわかるので期待に応える内容だと思います。貸本を含む年表つき。 以下、目次。 第一章 少女マンガ前史 第二章 少女マンガ幼年期の始まり 第三章 密室の構築 第四章 生活の中の少女群像! 第五章 おしゃれとラブの時代 第六章 少女マンガの完成に向けて 第七章 少女マンガ黄金時代 第八章 モブシーンの開幕 第九章 限りなく今 文庫本版へのあとがき 米澤英子 解説 藤本由香里