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女王国の城 (創元クライム・クラブ)

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女王国の城 (創元クライム・クラブ)の商品レビュー

3.0 前人未到の推理活劇
本作は、前作「双頭の悪魔」より実に15年振りとなった江神シリーズの第四弾である。有栖川作品において、江神シリーズは、火村シリーズと共に読者の人気を二分するシリーズだが、私は俄然、江神シリーズを推す。孤高の部長、少し毒舌なワトソン、漫才コンビ、そして、紅一点。このシュールなサークルが何といっても好きで堪らないのだ。
クローズドサークルものの同シリーズの中でも、舞台が剣呑な宗教団体という、これまでにないシチュエーションになっている為、その迫力は倍増だ。協会内で相次ぐ殺人、何故か警察の介入を阻んでEMCを「城」に軟禁する協会といったきな臭さといい、EMCの掛け合いのコミカルさといい、シリーズの持ち味は相変わらずで、全く歳月の間断を感じさせない。それどころか、むしろ、過去作よりも格段にグレードアップを遂げている。
冒険小説としては誠に快作。作中での一人称をアリスとマリアとの輪番にしたのがよい。マリアの「城」からの出奔劇の際の、アリスサイド、マリアサイド双方のスリルを、余さず熟読玩味することができた。犯人の人物造形や動機の説得力にページがもっと割かれていれば、純然たるミステリとしても一級だった。これだけが悔やまれる点だ。
本格ファンでも、とりわけ、トリックよりはキャラクターとの一体感を味わいたいという人。本作はまさに、そんな読者に特にお誂え向きだろう。
4.0 15年間分てんこもり
 待ちに待った、というよりは半ばあきらめていたシリーズ4作目です。
 
 15年ぶりということで、その間に流れた時間を作中では流れていないことにするための記述がちょっと不自然に感じられてしまいました。
 あちこちで「これは15年前の設定ですよ」と念押しされているようで…。
 あとは、UFOや宇宙人の話が私には多すぎました。大脱走とかくれんぼも長いような。
 このあたり、筆がのりすぎているように思いました。

 トリックに関してはいろいろ指摘もありそうですが、容疑者を並べて犯人をあぶりだすシーンはシリーズ初で(月光ゲームとは探偵のスタンスが違います)、どきどきしながら楽しめました。
 また、クローズドサークルになった理由がかなり新しくて驚かされました。異論もありましょうが、「理由」としてはすっきりと気持ちいいほど直球だと思います。
2.0 これだけの大長編を飽きずに読ませるには、筆致、トリックとも、物足りない
世の中には、おびただしい数の長編ミステリが溢れており、読む時間が限られている身としては、凡作に時間を費やす気にはなれないので、「本格ミステリ大賞受賞」、「本格ミステリ・ベスト10第1位」という、この作品に対する専門家筋の極めて高い評価には、どうしても、気を引かれてしまう。 

しかし、自宅に届いた上下2段組みで503ページにも及ぶ分厚い本を目にして、嫌な予感に襲われてしまった。というのも、私は、有栖川有栖の作品を読むのは初めてなのだが、私のこれまでの経験からすると、これだけのボリュームの長編ミステリは、作者によほどの筆力がないと、作品がどうしても途中でだれてしまい、読む方の集中力が削がれ、ラストまで読み進めるのに苦痛を感じてしまうからなのだ。 

結論からいうと、残念ながら、その予感は当たってしまった。まず、最初の事件が起きるまでに何と166ページも掛けたり、本筋から外れた城からの脱出劇に50ページ以上掛けたりといった間延びした展開がいただけない。後から読み返してみると、そうした展開の中にも、幾つかの伏線が張ってあったことはわかるのだが、それにしても、全編を通した、緊迫感のない、だらだらとした凡庸な筆致は、何とかならないものだろうか。作中で、しばしば作者が披露している無用なうんちくの数々も、冗長さに、一層、輪を掛けている。 

また、この作品を読んでいると、どうも、「最初にトリックありき」で、「人類協会」という特異な団体とその城や、11年前のある事件など、全てがこのトリックを成立せしめるために、作者が無理矢理あつらえた設定という不自然さ、わざとらしさを感じてならないのだ。肝心のトリック自体についても、これだけの高評価の本格派ミステリなら、読者としては、当然、アッと驚くレベルのものを期待してしまうのだが、11年前の事件の真相を含め、拍子抜けするようなレベルのものに終わってしまっている。 

5.0 待ったね〜
「月光ゲーム」、「孤島パズル」、そして「双頭の悪魔」に続く江上シリーズ長編である。なんと前作から15年ぶりとのこと。
UFOを信じる新興宗教団体の本部が舞台ということで、読み始める前はちょっと嫌な感じもしていた。宗教団体が反社会的な陰謀を企てていて、なんていう、ありがちなストーリじゃないだろうなっていう。
しかし、それは杞憂だった。
11年前に同じ村で発生した拳銃自殺事件と‘現在’の新興宗教の本部で連続殺人、事件を警察に連絡せず、あまつさえ江上たちを軟禁する教団の意図は…?
クライマックスでは本格推理小説の顰にならった読者への挑戦の後、数々の謎が名探偵江上二郎の推理によって合理的に解明されていく。著者らしい精緻なロジックの組み立てにより生み出される「カオス」が「秩序」へと収束していくカタルシス…。そういうものを十分に感じることが出来た。
全ての謎が明らかになると、宗教団体の本部が舞台ということさえも作者の周到な計算であったことが納得できる。

後書きによると、江上シリーズは後1本長編を発表する予定との事。楽しみだが、また15年待つのは勘弁して欲しい、いや、ホントに。
4.0 本格派の矜持
大学に姿を見せない江神の後を追って「神倉」にやってきたアリス、麻里亜、織田、望月の英都大学推理小説研究会の面々。そこは、宇宙人との邂逅を信じる新興宗教「人類協会」の本拠地であり、苦労の末、4人は江神と協会総本部で再会を果たす。ところが、そこで思いがけず殺人事件に遭遇。しかし、なぜか協会は警察への連絡を拒否、江神らを半ば幽閉してしまう。決死の脱出と真相解明を試みる5人だが、続いて第2、第3の殺人が…。

推理の中心は一種のアリバイ崩しなのだが、ポイントはむしろ犯行手段のそれにあり、作者がこの作品を書くまでに前作から15年の歳月が経過したことは無意味ではなかったと思わせるもの。ただし、この「トリック」以外は、本格ずれした人たちには平凡若しくは無理があると映るかもしれない。

さらに、教団が自らをクローズドサークル化した理由も別の謎解きとなっているが、その種明かしと結末にはややご都合主義の感も否めない。

学生アリスシリーズ特徴の青春小説的味わいについては、作者がなんら違和感なく登場人物を造形したそうだが、前作「双頭の悪魔」と比べても、一層現実感が薄まってしまったような気がする。青春の孤独や、社会に出ることへの不安らしきものを描こうという意欲はわかるのだが、文章の巧みさや用語の難解さが増した分、作者の感性がそろそろアリス達のそれから遠ざかってきている感じがしなくもない。

しかし、この小説の白眉は何といっても、帯にも引用されている読者への挑戦のこの科白、
「本格ミステリとは〈最善を尽くした探偵〉の記録だ。江神二郎の推理こそ、この物語を完結させる唯一の解答である。……論理の糸の一端は読者の眼前にあり、それを手繰った先に、犯人は独りで立っている。作者が求める解答は、その名前と推理の過程だ。」
これにはしびれた。 

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