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アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

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アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)の商品レビュー

5.0 政治家が間違っている時、その世界の正しいことはすべて誤っている
オリジナルは2003年リリース。直木賞より実際はレベルが高いといわれている吉川英治文学新人賞(第25回)を本作で受賞している。

最初に連想したのは村上春樹の『パン屋再襲撃』だった。あれは実際はマクドナルドを襲う話だったが、こちらは本屋。しかしながら読み終わった読後感は大分違う物だった。こちらの方が遙かに用意周到だ。変な言い方かもしれないが伊坂幸太郎の小説はプログラム的、もう一歩言い進めるとリバース・エンジニアリング的だと思う。出来上がったプログラムの構造を逆解析しているのに似ている。時間軸が2年ずれた世界が最後に交わる。この手法もどこかソースコードをインクルードして引っ張ってくるプログラミング手法を連想させる。理系の読者は似た感触を持っていると思う。

そして会話が絶妙だ。伊坂ワールドの生命線はこの会話の中にある、と感じる。

既に映像化もされているが、作者自身が言っているとおりこの作品の映像化というのは難しい気がする。と言うか小説故に可能な世界、そういうものを感じさせてくれる作品だ。
2.0 伊坂の限界
弛緩した文体が三分おきに眠気を誘う。高速道路の直線を一定速度で走行し続けると、睡魔に襲われるのと同じように。
2年の時の往来毎に覚醒するが、同時に、大きな横揺れに三半規管が不調を訴えるごとく、平行線を描く二つの物語の往復に疲労する。
さて、二つの道はやがて緩やかなカーブにさしかかり、同時に急な坂道となっていく。現実と記憶とがドルジという直線上のある一点で交差する。その交差点で、記憶が現実へと昇華し、現実が虚構へと蒸発する。
コインロッカーはその象徴として、適切な場所であるし、埋め込まれるキーワードとして、物語を交差した三人の写真とボブディランの歌は適切なアイテムだ。沢山の人が死ぬ。それぞれの死には意味づけが必要だろう。それが物語だ。だからこの物語の中の死にも意味が語られる。
弛緩した文体は最後まで続く。しかし物語を締めくくる最後の出来事の緊迫を浮き彫りにした。
そこまで作為だとすれば、この小説は実に意地悪である。
5.0 ドルジは何故椎名を選んだのか?
素晴らしい作品でした。

【以下、ネタばれ注意】

本屋襲撃の共犯者としてドルジは椎名を

何故選んだのだろうか?

それは神の声ボブ・ディランを椎名が口ずさんでいたから、

ということだが、勝手な想像をすると

大学を辞めて家業の靴屋を継ぐようにと母親から

告げられても、あわてることなく

「僕は靴屋が嫌いなわけじゃない。派手な職業でもないし、
利幅の小さそうな商売は、それで生活できるかどうかを
別にすれば、性格に合っているようにも思う。
 靴というのは生活に必要な品物だし・・・・・(略)・・
お客さんの足にフィットしたら嬉しいだろうし、
『自分の売った靴を履いて、それで誰かが一日を生きているんだな』
と勝手に想像して幸福感を得ることも、僕にはできる気がする。」

と、地元で大手スーパーの進出に晒され苦戦は強いられるだろうが、

靴屋としての自分を想像し、その生き方の中に幸福を見出す豊かな想像力を持っている

知性ある青年の波長と、ブータンの青年の波長が合致したから

とも考えられるのではないでしょうか。

【さらにネタばれ・・名作なので、未読の方は特に注意!】

「二年前」の出来事はは琴美=「私」が語るスタイル。

まさか、その語り手がラストで・・・とは・・・

琴美が最期に見た光景が「現在」で実現された時には

架空の人物ではありながら、この小説が琴美を弔うための

もののようにすら思えてしまいました。

そして、生まれ変わった3人が、一「婦」多夫?生活を営む未来を想像

してしまいました。
3.0 読めた展開と読めなかったところ
非常にいい作品であるのは間違いない。
2年前と現在の2つの時間を交互に見せながらものがたりは進んでいく。
段々と展開が読めていく感じがしてやや冗長であるかと思う場面も多かった。
読めなかった点は、実はあいつは・・・・であったこと
5.0 気付いてしまうと。

読んでいるうちに、妙な違和感を覚え、それに気付くと不安が先走りページを繰る手が早くなる。


ああ、まさか。
まさかまさかと読んでる内に不安が的中し、何かヤダ何かヤダと思いながら読み終え、後味が悪い。
それでも完全な種明かしの後、もう一度、読み直したくなる小説。

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