ハートビート。聞こえる、感じる。
二つの物語が絡みあい、縺れあって一つの大きな流れが見えてくる。二つの物語には、それぞれ謎がある。どこで関係しあうのか?いつ同じ話として謎が絡みあうのか?と頁を繰る手が止まらない。
元高校の同級生の原之井、ヤオ。そして二人に共通の友人、巡矢。この三人が背負う話がまず一つ目。
元男爵家で財閥の五条辻家の直系であるユーリ少年(小学五年生)。ユーリのお屋敷で起きる幽霊の謎が二つ目の話。これらが細かく交互に語られていく。 優等生で委員長と呼ばれていた原之井といわゆる不良少女だったヤオとの間には十年後に果たすはずの“約束”があった。
この原之井の人物造形がとても複雑。善良で正義漢。しかし、深く傷ついた心を抱えている。
ヤオについての謎を、巡矢が手助けするのだが、彼もまた興味深い人物。巡矢はこの物語を支える探偵役でもあり、言動と裏腹な内面を覗かせつつ、小気味よい切れ味の活躍をする。
巡矢が原之井に語る「ハートビート」の二つの意味は、最後まで生きている。あっと言わされた。きゅうんと心を鷲掴みにされたような切なさとともに、沸々と温かなものがこみ上げてくる。
ミステリーとしても、友情を巡る青春ストーリーとしても、また小路さんが得意とするちょっと不思議な能力をもつ者もちゃんと登場させていて、これまで以上に楽しめる作品であると思う。