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少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

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少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)の商品レビュー

5.0 真っ当な少女の魂
   〈不幸をウリにするなんて下品だってこと。(中略)不幸は、
    口に出したら自分の魂を汚してしまう気がするんだ。〉


近年の小説の登場人物は、隙あらば、自分のトラウマを
振りかざし、「不幸自慢」をしているような印象があります。

本作の主人公・大西葵は、本能的にそういった
傾向の卑しさや虚しさを知っているといえます。


無職でアル中の義父からはDVに遭い、親であるより、
女であることを優先する母には重荷に思われている葵。

しかし、そんな状況を葵はありのままに受け入れ、特に親に対して、
怨嗟の念を募らせることもなく、なんとか日々をやり過ごしていきます。

自分だけが特別不幸なのではないし、他人に相談したところで
現実が変わるものではないと悟っていたからでしょう。


また、本作におけるゲームの扱われ方も、じつに暗示的。

葵にとってゲームは、鬱屈する感情を発散させる安全弁であると
同時に、淡い想いを寄せる幼なじみとの絆でもありました。

その象徴ともいえるメモリーカードを、
義父はあっさりと握りつぶしてしまいます。

それはそこに宿ったデータという名の「命」や、
幼なじみとの思い出まで破壊されたことを意味します。

俗耳に馴染む「ゲームをしていると命に対する想像力を失う」
という紋切り型の批判に対する皮肉と挑発といえるでしょう。


本作は、深刻なテーマが扱われていながら、重さを感じさせず、決して
ハッピーエンドとはいえないラストでありながら、読後感も爽やかです。

それはひとえに葵のどこかとぼけたお茶目さと、
その精神の健全さに負うところが大きいと思います。


そんな葵が、「時代」にサクリファイスとして選ばれて
しまうのは、ある意味、必然だったのかもしれません。
4.0 カッコがつかない物語
「あたし、大西茜13歳は、
 中学2年生の1年間で、
 人をふたり殺した。」


この帯のコピーを見た時には、また最近流行の陰惨な話か、あるいは十代の自己陶酔話かと思ったんですけど、本編の書き出し最初の3行に


「中学2年生の1年間で、あたし、大西茜13歳は、人をふたり殺した。
夏休みに一人、それと、冬休みにもう一人
武器はひとつめのときは悪意で、もうひとつのときはバトルアックスだった」


とあって思わず吹いた。
戦斧て。

まぁ事実関係だけ追えばこの書き出しの通りの内容なんですけど、不思議と印象に残るのは登場する少女たちの健全さで、その、肩透かしな感触が心地よかった。

そして健全であるが故になんだか肝心な所でカッコがつかない。
友達とたむろしててもしょせん狭い街の中のマックかゲーセンだし。
ゴスロリファッションでキメても世間の些事を達観しきれるわけでもないし。
男子はマンガみたいに良いタイミングで優しい言葉をかけてくれたりしないし。
人を殺しちゃったら死ぬほどブルっちゃうし−−−。


そのカッコがつかない情けなさというのが実に中学生らしいというか、万人の中学時代に共通する普遍的な感覚であって(高校生とかだとしっかりしてるキャラクターならそれなりにカッコついてしまう) 、それが殺人という特殊な題材を扱っていても読者が身近な感覚を維持しながらすんなり読んでいける理由なんだと思いました。

正直コピーにあるような「少女の凄絶な“闘い”の記録」だとか「切ない純粋な殺意」なんてものを期待すると、肩透かしをくらうと思います。「ちょっと変わった題材の青春ノベル」ぐらいを想定して気軽に読んだ方がいいですよ。
3.0 少女の夢想力
 題、小題が魅力的だ。「用意するものは冷凍マグロと噂好きのおばさんです、と静香は言った」なんて、とても素敵。
 ただ、この小説には本気の大人が一人も登場しない。女子中学生の世界と、そこから見た世界の片鱗しか描かれない。だからピュアな感じがするともいえるし、ライトノベルから抜け切れていないともいえる。
 静香の穴だらけの完全犯罪計画と同じように、少女の夢想力で世界を再構成したに過ぎないように思う。土産屋で手に入れたバトルアックスが、実際に殺傷力を持つというところは、ちょっといい加減すぎる。
 だけど、自分の不幸を正面から見つめることに耐えられない、少女の美意識で構成された軽さが、救いにもなっている。すいすい読めるし、文章から作者の才能を感じる。
5.0 少女とミステリ
 少女七竈で好きになった桜庭一樹先生の初の単行本ということで購入した小説です。
 この小説がミステリかどうかというのはありますが、広い意味でのミステリ小説にあたると私は思います。私が読んだことのあるミステリ小説では、ジェームス・ケインの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の構成に近いものです(郵便配達がミステリかというところもありますが)。犯人は中学生なのでトリックは偶然によるものだったり欠陥だらけだったりしますが、なかなか面白い方法でした。
 少女には向かない職業のもう一つの骨子として少女の描写があります。中学生の時期は自分ではしっかりしていると考えていてもどことなく不安定で、人間関係や環境に強い影響を受けてしまいます。そういった弱さや流されやすさを主人公の少女を通して書かれていて、殺人という結果へと流れていくにもかかわらず、うなずいていしまう箇所がいくつもありました。
 ミステリとしては一風変わった小説ですが、少年少女時代の一つの側面を書いた青春小説としても楽しめるものかと思います。
5.0 最大問題作
山口県下関市の沖合の孤島に住む中学2年生の葵。学校ではおもしろキャラに専属するみんなの人気者的存在。そんな彼女の家庭環境とは。病気でアル中の義理の父。そんな彼の存在に心苦しめられていた。葵は図書委員の静香の存在を気にしはじめる。そして二人は独特の世界に入り込みある計画を催し始めるのであった。こういった普通の女の子にある裏と表。本当の表の自分とはいったいどっちなのだろう?と思うことがある。客観的にみることはできるがもし自分がその環境で絶交のタイミングであったらどうだろう?それはその時になってみないとわからないが、考えさせられるものがある。葵と静香の危ない友情 切っても切り離せない関係というのはこのことであろう。絶対に裏切れないのである。そのことを犯してしまってからの微かな心境の変化。そして友情関係。ページ数は決して多いとは言えないが、より濃い内容になっている。現代日本の「罪と罰」甘く切ない、悲しい彼女達の半年間の日記である。

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