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ニッポン硬貨の謎

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ニッポン硬貨の謎の商品レビュー

2.0 クイーンファンは楽しめると思いますが・・・
 クイーンについて詳しい人にはとっても面白く読める小説だと思います。
 それほど詳しくない私にとっては、期待値があまりに高かったために正直がっかりという展開でした。「ミステリー小説」としてはがっかりですが、クイーンファンにとっては作家論、作品論としても読めるので、これほど楽しい小説はないと思います。
5.0 クイーン作品を全部時系列的に読み直したくなる、愛情と敬意にあふれたパスティーシュ
1970年代後半、来日したエラリー・クイーン(探偵であり作家の虚構人物の方)が解決した事件について記された未発表原稿が発見され、それを北村薫氏が翻訳したという体裁。

本格というのはダブルミーニング。本格ミステリの草分けの一人であるエラリー・クイーンの国名シリーズを扱うということで、ジャンルとしての本格。そして、未発表原稿という体裁のパステイーシュの王道な手法をとりつつ、実にクイーンスタイルを踏襲し、クイーン論まで展開してしまうという、ファンノベルのスタイルとしても本格派なのである。

脚注のお遊び(これは、作中で展開するクイーン論にも呼応している)や、文体の模倣...初めて日本を訪れた外国人目線のズレや、作品が固まるまでに派生してしまった事実誤認の表現が、脚注のツッコミともあいまって、実にいい塩梅にリアル...など、未発表作品の翻訳の雰囲気が良く練れている。

一方、北村薫としての作風も失うことなく作品は構成されている。北村氏といえば、ドラマ部分での人間描写の鋭さも魅力の作家である。美や温もりなどを馥郁たる描写で紡ぐ一方、鮮烈なまでのドス黒さを一閃させる事もできる。

本作では先述の通り、ある種の人には神にも等しいエラリー・クイーンが日本にやってきたらというifのシチュエーションを設定し、神様と幾許かの時を共に過ごすのみならず、ラブコールと同義の作品論を開陳したり、極めつけは共に難事件に立ち向かうという、願望従属のファンタジーである。その、淡い温もりのある色調の風景に、幼児連続殺人事件という漆黒の悪意が吹き抜ける。

この事件の選定の趣味が、なんとも北村節だなぁと思ったのは俺だけではあるまい。

以前創元社より上梓されたアンソロジー『五十円玉二十枚の謎』に対する、エラリー・クイーンの回答という趣向も楽しい。敬意と愛情に満ちた、だが、才能無くば実現不可能な、極上のパスティーシュ作品である。
1.0 本格ミステリ大賞受賞作
本格ミステリ・クラブ会員の投票によって選ばれた本格ミステリ大賞受賞作。会員が自分たちの会長の作品を記名投票で大賞に選ぶという仲良しクラブばりばりの大賞受賞作。これで本作がすばらしければ言うことはないのだけど、仲良しクラブ大賞受賞作にふさわしく、幼稚な内容なので残念というしかありません。本格ミステリ大賞という賞がどれだけ無内容の駄目賞なのかということが本作を読んで、よくわかるし、その選ばれ方(会員が会長の作を記名投票で選ぶという恥ずかしさ)を見ても、よくわかる本。日本ミステリのレベルの低さを思い知らされる残念な本格ミステリ大賞受賞作でした。
3.0 北村薫がのびのびと好きに書いている姿が目に浮かぶ怪作
 1977年に来日したアメリカの名探偵エラリー・クイーン。東京滞在中に、幼児ばかりを狙う連続殺人事件が発生する。
 同じ頃、女子大生の奈々子はバイト先の書店で奇妙なお客に遭遇する。50円硬貨を20枚握り締め、それを千円札に換えてくれるよう奈々子に頼むのだ。
 この二つの事件がやがて一つになって…。

 日本を舞台にしたこのエラリー・クイーンの未発表原稿を、北村薫が十年の歳月をかけて翻訳した、という設定のパスティーシュ小説です。
 怪事件を名探偵が鋭い推理で見事解決していく、という物語の展開を楽しむための小説とはいえません。事件そのものはあっけなく解決してしまいますし、しかもクイーンが説く真相は、必ずしも多くの読者の納得を得られるようなものではないと私は考えます。

 むしろこれは推理小説の読み手として深い見識と筆力をもった北村薫が、パスティーシュ小説の装いを用いて、クイーンのコアなファンに向けて贈るエラリー・クイーン作家論といえる作品です。クイーンの「シャム双子の謎」や「緋文字」、さらにはヴァン・ダインの「僧正殺人事件」に関する北村自身の論考を、主人公の奈々子たちの口を借りて語っています。
 そして本書全体が若竹七海ほか「競作 五十円玉二十枚の謎」(東京創元社)への北村薫の遅ればせながらの参加作品という意味を持っています。
 ですから、よほどの推理小説ファンでなければ本作品にどっぷりと遊ぶのは難しいかもしれません。

 それにしてもクイーンと奈々子のコンビが「空飛ぶ馬」以来の円紫さんと私に重なって見えてきました。北村薫はあのシリーズの続編を書く意思をもう持っていないと語っていますが(別冊宝島「北村薫Complete Book」でのインタビュー)、私はそのことがとても残念でなりません。

4.0 なんだかんだいっても、北村薫なので
クイーンをほとんど読んでいない私がレビューを書いてもいいのだろうかとは思いつつも、北村薫ファンとしては、今回も楽しく読み終わりました。北村薫翻訳のクイーンという体裁をとってはいますが、風景や人物の描写、その言葉の選び方の端はしに北村薫らしさがあふれており、特にクイーンを知らない私でも、いつもの「北村薫作品」として読み終わりました。もちろん、クイーンに精通している方がより楽しめるのでしょうが、あとで「シャム双子のお謎」を読むというのも、それはそれで楽しいなものです。北村薫さんの読書ぶりにはいつも感心しきりなのですが、今回も何度も感心させられます。そして、北村薫の作品を読むと必ず、読まなければならない本リストが増えるんですよね。

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