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毒入りチョコレート事件 (創元推理文庫 123-1)

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毒入りチョコレート事件 (創元推理文庫 123-1)の商品レビュー

2.0 山型アーチばりの証明
一言で言えば駄作である。理由は誠意がないから(ただの誹謗ではなく、正当な理由に基づく
批判なので悪しからず)。

さて、本作の内容は当局が投げ出した難事件をロジャー・シェリンガムが会長をする「犯罪
研究会」の六人が、それぞれ独自に推理・調査して一人ずつ順に発表・討論するという構成
を為しているが、如何せん肝心の読者に対して何ら想像力の道筋を与えずに、まさに勝手に
文字を綴ってるだけのレポートであり実に味気ないし、その内容が山の連なりのように美麗
ならともかく、ただ山の上に山を重ねる屋上屋...
本格の手法を駆使したアンチ・ミステリと捉える人もいるのかもしれんが、むしろこれは
本格の手法を駆使したギャグであり、叙述トリックものを読む心地と形容した方がよほど
しっくりくる(それも恐ろしく凡作な...)。
謂うならば、それはトーシロ騙しであり、このジャンルを読み慣れない人からすれば傑作に
思えても、そうじゃない観点からは甚だ無粋なのだ。

結局の所、無理にでも教訓をみつけろと云われれば、何事をするにも最低限の節度が必要なん
だなあ。これじゃ、愚にもつかない近所の噂話を痴呆のように延々と語るおばちゃんみたいな
もんなんですねハイ。一、二度ならつられて笑ってやるが、あんまりシツコイと眉をひそめて
閉口してしまうもんです。

やはり、アントニイ・バークリー(フランシス・アイルズ)の捻くれた性格が良い面に出たの
は『殺意』のような倒叙形式であって、本作のような推理小説を風刺したようなものを書こう
とすると、途端に自らの馬鹿さ加減を露呈してしまう結果になるんですよネ。。
上記の『殺意』なら傑作として万人に薦められますが、本作はせいぜい善くても珍味ですね。
3.0 アンチ・ミステリーの「はしり」
本書は犯罪研究会の6名の会員が、未解決の毒殺事件に対しそれぞれの推理方法から7つの解答を示すという作品で、いわゆるアンチ・ミステリーの「はしり」の作品だろう。

同じ証拠・手がかりからそれぞれが別々の推理を組み立てる訳で、解釈の仕方でどのような解決にも導き出せると推理小説を否定されているようで、好きになれない。

ただ、真相を読み解くための手がかりはきちんと与えられており、間に挟まった間違った真相に到達する推理が余分なだけ、と考えればいいのかも知れないが。
5.0 まさに横綱相撲
殺人事件に対する6つの仮説に対して、論理的に検証していく過程は、現代のロジカルシンキングといった、ビジネススキルにつうじるところがある。確かに短絡的な、仮説もあるのだが、ロジャー・シェリンガムを含む、3名のプレゼンは、どれが真相でもミステリとして、納得できるものとなっている。

一旦つくったものを、何度も再構築し、一冊の本にまとめあげたバークリィの粘り腰に脱帽。まさに横綱相撲。
5.0 《多重解決》の魅力と限界
探偵役六人による、六人六様の推理が楽しめる《多重解決》ミステリの金字塔。


最初の探偵役の推理が、次の探偵役によって、その矛盾や欠陥が指摘されるという
試行錯誤が繰り返されていくなかで、より説得力のある新たな推理が構築されていく
過程は、知的興奮に溢れ、じつにスリリングです。


また、六人目の探偵役によって「真犯人」が名指しされるのですが、そこまでの段取りと構成も見事。


まず、それ以前の探偵役の推理で、「真犯人」と同じ属性を持つある人物が犯人として
挙げられるのですが、即座に否定されたという事実があるため、そのパターンはもうない、
という予断を読者に持たせるといったミスディレクションの妙。

次に、「真犯人」と目される人物に、六人目の探偵役が最後の推理をする
直前に、犯人という人物像とは真逆の振舞いをさせているという構成の妙。

これは、意外性というより劇的効果という点で抜群です。


このように、本作が傑作であることは、疑い得ないのですが、野心作であるゆえの瑕もあります。

それはデータの後づけ(新しい物証や新事実の追加など)が
多く、読者に対し、必ずしもフェアとはいえない点です。

このことは、作者の恣意で「何でもあり」になる可能性を潜在的に持つ、
ミステリという形式への批評性のあらわれでもあるのですが、同時に、
本作自体の完成度も低くしていることは否めないと思います。


しかしそうだとしても、たった一つの真相を追求するという、従来のミステリに対し、
ミステリが本質的に内包する恣意性を暴露し、批判しながらも、その一方で、論理に
基づき、推理をすること自体の面白さを洗練された手つきで提示した本作は、今なお、
決して色褪せない輝きを放っています。

4.0 デクスター、ブランドファンには必見
イギリスのレインボークラブ、そのクラブにユーステス卿あてにチョコレートが届いた。この試供品の感想を求めたいと。

しかし、卿は、こんな下世話なものをこのようなところに送ってくることは勘弁ならない、と怒り狂う。

そこで、同席していたベンディックス氏がこのチョコレートをもらい受け、家で妻と食べると妻は死に、ベンディックス氏も一命は取り留めたものの、倒れ込んでしまった。チョコレートには毒が混入されていたのだった。

バークリーの作品を読むのは2度目で、前に読んだのはこの作品の原型ともいえる「偶然の審判」でした。

多くの作品が翻訳、紹介されるなか、この作品を選んだのはそういう理由からでした。

六者六様の推理が展開され、新しい推理が前の推理を凌駕するという構成はとても面白かったです。

クリスチアナ・ブランド、コリン・デクスターの好きな方にも楽しんでもらえるんじゃないでしょうか。

個人的に、クリスチアナ・ブランドが書いたという、もう一つの解決も是非とも読んでみたいです。

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