A Page Turner!
ドロシー・セイヤーズによる、ピーター・ウィムジイ卿の長編第3弾。ピーター卿いわく、これこそ「事件の中の事件」、「模範例」となる事件だ。なぜなら、老婦人アガサ・ドーソンの死には殺人の疑いなどもたれていなかったから。これぞ「成功した殺人」。そして、ピーター卿が言うように、世間で騒ぎ立てる事件は、「犯罪が起きた疑いが持たれた瞬間から失敗に分類される」ので犯罪の失敗作にすぎない。ピーター卿は、離婚と幸せな結婚の割合と、気づかれた犯罪と全く気づかれない犯罪の割合とを比較して、成功した殺人の数など誰にも分からない、と言う。幸せな人間はわざわざ人前に出て自分は幸せだとは言わないように、殺人犯も自分が完全犯罪を犯したなんて絶対言わない・・・・・まさにその通り。読者もそんな現実的な恐怖を感じつつ、この狡猾な殺人犯を追いつめる物語をある意味では身近なものとして感じてしまう。もし、一般市民が謎を解くとしたら多分こんな風になるのだ、というリアルさをこの物語は持っている。なぜなら、推理小説ではなくて、現実の世界では、誰も「このような謎がここにあります」と言ってはくれないから。 これほど日常生活に根ざしていて、スリル溢れる物語はそうはない。初めの章から一気にひきこまれて、私は徹夜でぶっ通しで読み続けて、一晩で読み終えてしまった。セイヤーズの推理小説の中でも最もすばらしい作品であると思う。