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バイバイ、エンジェル (創元推理文庫)

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バイバイ、エンジェル (創元推理文庫)の商品レビュー

5.0 ナディアとカケルの因縁
大衆への強い嫌悪から革命家をこころざす者。
そして、現象学的に誰よりも大衆であろうとする矢吹駆。
双子のような存在の両者は、出会い、すれちがい、やがて永遠の別れを迎える運命です。

一方、裏でそのような物語が展開されているとも知らず、表の主人公と言うべきナディア・モガールは、無邪気な探偵ごっこに熱を上げたり、新しい恋人に夢中になったり、スキー行ったりパーティー行ったりと、青春を満喫していました。
しかし物語の裏と表が合流するとき、彼女もまた、少女ではいられなくなるのです。

なにより残酷なのは、矢吹駆を事件にかかわらせることで、ある意味最悪の結末を導いてしまったのが、ほかならぬナディア自身であるという事でしょう。彼女は、自分の目に映るだけの世界に、満足できなかったのです。
苦い話だと思う。

女の子探偵がこっぴどくしてやられるという構図は、アンチ赤川次郎のようにも思えました。
5.0 この世界では天使だからこそ地獄に堕ちることになる
〈首無し屍体〉=犯人と被害者の入れ替わり、という推理に対し、
探偵小説風の臆断と一蹴する探偵役の矢吹駆。

ミステリのガジェットに対する「意味沈殿」を指弾されるのは、
マゾヒスティックな快感があります。


そして、本作のクライマックスである駆と犯人との思想対決の場面。

自己内対話の具象化ともいえるこのシーンでは、正義や理想といった
理念が、いかに倒錯していくかの過程が自己解体されていきます。


〈この世界では天使だからこそ地獄に堕ちることになる〉


駆が最後に残すこの言葉は、失われていく彼の「半身」に向けた弔辞なのです。
2.0 連合赤軍の謎は解けましたか ?
作者のデビュー作。作者は連合赤軍のメンバの心理が知りたくて、その一環として本作を書いた由。作者は小説の他、ミステリ評論を書くのが好きらしく、かつそれを貶されると黙っていられなくなって、熱くなって反論するという子供っぽいタイプ。そうした作者の気質が本作にも良く出ている。

舞台はパリなのだが、当時パリで特に学生運動が盛んだったという記憶はないから、設定が不自然である。カッコつけと言われても仕方がない。もっとも、学生運動自身は事件に関係するのだが。そして、作者が本作で披露して見せたのが「直観推理」である。これは探偵役、矢吹が持つ能力の事で「名探偵は事件の初めから真相が分かっている」事を意味するのだそうだ。笑わせてはいけない、ミス・マープルだって刑事コロンボだって最初から犯人が分かっていて、役を演じているんだ。それと首切り殺人事件が話のメインなのだが、トリックに新鮮味が無く全く詰まらなかった。

犯人のグループの未熟さにも呆れたが、作者の未熟さ加減も相当なもので、その後作者家業を続けて行けたのは僥倖であろう。それにしても、本作を書くことで連合赤軍の謎に少しでも迫れたのであろうか ?
3.0 うん
 話自体は多分面白いんだと思う。思想対決のあたりも別に嫌いではない、というかむしろ好きだ。
 だけど、舞台も登場人物も駆以外全員外国。つまり、翻訳者嫌いの僕にはちょっと……
3.0 『テロルの現象学』の衝撃が薄まってしまった…
笠井の小説は、『テロルの現象学』の限界を露わにすることだけに寄与しているという意味で、がっかりさせられる。特に、彼の小説の中でも最も良質と評価されている本作品においてもそうなのだから。
意図としては、あまりそういったことに関心のない人をその世界に引き込むために小説化したのかもしれないが、先に『テロルの現象学』から入ってしまうと、そこで提示された問題性が実は底が浅かったのかなと思わされてしまうのである。
笠井の小説世界においては、特定の狂信的・テロリスト的革命家が背後ですべてを操っていることになっている。主人公との対決図式を明確にするという物語的な機能によって作品としての緊張感を醸しだしているのは事実だが、『テロルの現象学』が提示した思想の怖さ(と同時に実は魅力でもある)という観点からすると、それだけじゃないでしょ?といいたくなる。
あと、イマドキ、テロリスト・ネタなら『24』あたりを見たほうが物語としては断然面白いんだよね。

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