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2004年に出た単行本の文庫化。 4つの短篇+αからなる連作短編集。 プロレスの世界から題材を取った、珍しいミステリ。この世界ならではのトリックや仕掛けが活きていて、読み応えのある一冊だった。 それにしてもどんでん返しのつくりかたが上手い。しかも、話そのものに巧みに織り込まれているから、「おおっ」と驚かされる。この部分だけ取れば、超一流の域に達していると思う。 一方で一冊を通してのトリックが平板だったり、肝心なところでガッカリするようなオチがあったりと、まだまだ成長の余地も。見守っていきたい作家のひとりだ。 ただ、一発屋のような気がしないでもないような。 ちなみに、プロレスについて何も知らない私でも楽しめるくらい、解説・蘊蓄が盛り込まれており、読者に親切であった。
ゴミ捨て場に放置された覆面レスラーの死体の謎・・・など、プロレス団体の周囲で起きる事件を、格闘技マニアの刑事が追う。 こう書くと、汗臭く、血腥い大味な小説を想像しますが、実際には緻密に構成された連作ミステリとして成立していて、驚きます。たとえば、第3話の冒頭の妙に詩的な文章とかも、ちゃんと狙いがあって書かれているのです。 1話1話で完結する各話には、密室殺人あり、叙述トリックあり、とミステリのさまざまな技巧が仕掛けられている。そして最終話の最後ですべてがつながって、真相が明らかになる。 格闘技おたくの若い刑事と、コンビを組むベテラン刑事など、味のあるキャラクターが結構いるのですが、彼らを惜しげもなく脇役に置き続ける(思ったより出番が少なく、活躍もしない)あたり、この筆者は<本格ミステリ>が書きたいんだろうなあ、と思いました。 興味がある人は、プロ野球界を舞台にした水原秀策のミステリ小説「サウスポー・キラー」と読み比べてみると面白いと思います。あちらは<ハードボイルド>が書きたいというのが伝わってくる作品です。 <八百長か、本気か>という命題を抱えるプロレス界や、巨額のお金が動くがゆえに怪しい部分があるプロ野球界(最近、暴かれつつありますね)など、一般人にとって闇の部分が多い世界は、実はミステリの題材にもってこいなのかもしれません。 個人的には、トリックを成立させるためだけに筆者が生み出した奇形の建物の中で毎回殺人事件が起きる・・・・なんてミステリよりは、よっぽどこういう現実世界に近い作品のほうが興味があります。
プロレスと総合格闘技の世界で起こる事件を扱った連作短編集。 書き込まれたディーテール、精密な筆致、張り巡らされた複線、どんでん返しの妙。 個々の短編のトリックはもう一つですが、 連作短編として構成された全編の精緻さは見事です。 寡作な作者ということですが、この後上梓される作品、 一つ一つが待ち望まれる作家になりそうです。