アーサー・C・クラークの後の傑作の片鱗が伺える初期作
原作は1953年刊行ですから、著者のごく初期の作品になります。舞台は数十億も年未来の地球なのですが、なぜか人類はダイアスパーと呼ばれると砂漠に囲まれた一都市でのみ細々と生存しています。ダイアスパーの住民は外部世界に対する好奇心や知的欲求と言うものをすべて失っているのですが、そこは、秩序正しく、犯罪なども無く、ほぼ不死を勝ち得た社会であり、ある意味で究極の平和世界です。その沈滞したダイアスパーでただ一人好奇心を失っていない主人公アルビンが、あることから外部世界への道を見つけます。かつては銀河に飛び出して行った人類は、何故いまはこの地球に閉じこもっているのか?いったい過去には何が起こったのか?アルビンはその謎を解く鍵を握ります。後に「幼年期の終わり」や「!2001年宇宙の旅」などのSF界きっての大傑作を産み出す著者ですが、この初期の作品にも壮大なテーマに挑戦すると言う著者の力量の片鱗は伺えます。ただ「銀河帝国の崩壊」と言う邦題は誤解を招く上に、本書の内容を正しく伝えているとは思えません。本書は決して銀河帝国の崩壊を描く物語ではありません。原題の「Against the fall of night」の直訳の「夜の帳を越えて」か、あるいは「人類と宇宙の再生」などの方がよほど本書の内容を伝えていると思います。
変わらなきゃも変わらなきゃ。
何億年もの未来、地球に存在する唯一の都市=ダイアスパーに生を受けたアルビンは、この七千年来に生まれた唯一の子供だった。科学の粋を極め、欲するものはすべて得られるこの理想社会も、彼にとっては満たされぬ想いを募らせる牢獄にしか過ぎなかった。 彼はついに決意する。知る者のいない外の世界へ踏み出し、人が失ったすべてのものを取り戻すために。
少年の冒険とその成長という“ジュヴナイル” として見ても、“SF”小説として見ても一級の、すこぶるお得な作品。 …にもかかわらず、どうもパッとしないのはズバリ、このタイトルが原因です。
歴史的な作品とはいえ、無骨で物語の内容に適さないこのタイトルは、そろそろ変えても良い頃なんじゃないでしょうか。 原題は “AGAINST THE FALL OF NIGHT” という体を現した名タイトルなのに。名作であるがゆえの“ダイアスパー化”…なのかな?