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あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実の商品レビュー

5.0 Tシャツから世界を観る
綿花から糸になって生地になってシャツになって古着になってぼろくずになって再び生まれ変わったり別のものに姿を変えたり・・・

コットンTシャツを軸にした観察を通して、市場原理のみで議論されがちな世界経済に、政治ならびに産業発展におけるイノベーションとそれを可能にした文化/歴史的要素がいかに根本的決定要因として作用しているかを浮き彫りにする。

淡々と事実を著述しており、悲劇を悲劇として描いて感動させたり、グローバリゼーションに対する憤りを新たにさせるような内容ではない。むしろ、そうした立場に対し、決然と距離を置く。

ただ単純に読み物として抜群におもしろく、また、資本主義のこれからと、自分の立ち位置のこれからを考える上で貴重な示唆を与えてくれたので、星5つ。
4.0 産業保護の本質が分かる
アメリカで売っているTシャツの川上(つまり綿花生産)から、川下(つまり古着)までの流通の現状と歴史が分かりやすく解説してある。

繊維産業は多くの先進国にとっては、産業国家として離陸する際に国家を支えた産業である。それが、次々に安い賃金の国へと中心が移り、先進国では保護の対象となる、という繰り返しがみられる。本書で主に取り上げてあるアメリカでも、イギリスから市場を奪い、日本などに市場を奪われた。そして、その後、現在に至るまで、強烈な保護が行われている。

筆者は価値観をできるだけ押さえて、アメリカの繊維製品保護政策の実態と歴史を記述している。それでも、保護政策が抜け道のモグラたたきと、開放派との妥協の結果、極めて複雑でナンセンスな規制(例えば、繊維製品の複雑な分類や、生産地の不可解な定義、妙に中途半端な数量などなど)を見ると、少なくとも長く続く保護政策は無意味であることがあぶり出される。

しかも、結局のところ繊維産業の保護は雇用を作り出していない。作り出されたのは、複雑な規制を考え出し、他国と交渉をする官僚群であった。その経費の分を直接補助した方が手っ取り早かったとか。わが国でも、規制の善悪を論じる時に運用コストの問題を考えないことが多い。まさしく、パーキンソンの法則である。パーキンソンは偉大だ。

最近、輸入割当を撤廃しようとすると、生産国から反対の声が上がったという話も教訓的である。規制がぬるま湯的秩序を作り、それが体制となる。そして、一旦できた体制の変更には、どんなに理不尽な体制でも反対する勢力がいるのだ。制度の変化は企業にとってリスクとなる。結局、産業保護は企業のリスクを減らすのではなく、制度変化の可能性と言うより大きなリスクを生み出している。

保護と規制でがんじがらめのアメリカの繊維市場の話のあとでは、Tシャツが古着になってからのアフリカの自由市場の話はさわやかにすら感じる。いわゆるグローバリゼーション反対派には、「古着貿易がアフリカの繊維産業の成長を妨げているから規制すべきだ」との意見もあるようだが、規制が何を生み出すかは明らかだ。

しかし・・・・・・
アメリカに自由化を要求された時に、繊維産業の自由化と引換えにするとか、交渉する訳には行かなかったんでしょうかねえ。外務省や通産省が知らなかった訳はないのでしょうが。
3.0 現場主義に立っているので説得力あり
実際にTシャツの製造、流通のプロセスを取材して、その環境、歴史まで踏まえた現場主義に立っているため、イデオロギーに基づく俗論でなく、説得力があるように感じました(例えば、中国の労働者が過酷な労働環境を強いられているのではなく、農村の不自由な環境から逃げ出すために都会の工場労働を選択していることなど)。
また、Tシャツ一枚で、アメリカ、中国、アフリカなどの世界旅行をできることに驚きます。

読み物としては、やや大学の教材臭が気になります。アメリカの綿産業よりも、アフリカの活気あるマーケットの方がいきいきと描かれています。
4.0 フェアトレードとは一線を画す,グローバリゼーションの真実
著者がアメリカで入手したTシャツを手がかりにその生い立ち,
最後までの流通経済を追った本

単なるフェアトレードのみを扱った本とは異なり,綿Tシャツの
最初から最後までを丹念に比較優位性の観点から追っている.
綿わたがTシャツに変わるそれぞれのフェーズ,つまり
 綿畑のテキサス州農家の比較優位について.
 綿わたから,白地のTシャツができるまでの中国の比較優位について.
 Tシャツが消費されるアメリカの貿易についての考察.
 最後に中古となり,完全市場となってゆく様子.
を丹念に検証している.

 結論にて,フェアトレードを憂いていた女子大生の言葉に対して
筆者からのメッセージは貧者を市場から守るのではなく,政治の中に
組み込んでいくこと,そして,物事の両面にしっかり目を向けなさい
ということであった.これは,単にこの本を斜め読みしていると
見落とし勝ちな点であるし,レビューにも見落としていると
思われるものもある.

 ちょっとだけ残念なのは,日本語版では,引用文献をすべて省略
されており,ここからさらに考察を深める際にはやっぱり英語版が
必要になる.虫眼鏡で見える程度でも良いので残してくれると
英語版を買う手間が省けたと思うのが残念でした.

5.0 世界を平和に近づけるための経済書
読了後、頭の中に響いていたのは"Give Peace a Chance" by John Lennon.

経済学者である著者が、原料から古着リサイクルまでのTシャツの旅を通して語りかけるのは、多様な立場の認識とその許容だ。

米国テキサス州の3代続く綿農家と南部の奴隷、中国で農村の暮らしから自立するために紡績工場で働く女性たち、1800年代綿産業黄金期の英国の工場、東アフリカ、タンザニア...時と空間を超えて、それぞれの場所で一生懸命生きる人に寄り添うように物語を紡いでいく。その物語は、一つの価値観に固定したジャッジを揺さぶり続ける。

Tシャツの旅の最終章、米国の富裕層が放出した古着がアフリカへ渡り、リサイクルする古着市場だけが本当の「自由」貿易だという指摘には、ハッとさせられた。ものは捨てると同時に意識から消え去る。無意識に追いやった後だからこその「自由」=「無視」「無関心」。普段の生活の中で、いろんな物事を「意識の外」に追いやっているということに気付かされる。

意識の外に暮らす人の生活に、お互いが少しずつ思いを馳せ、共感を持ち敬意を払うだけで、ちょっとずつ世界全体が平和に近づく。そんなメッセージを感じた。

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