きたるべき新時代を知り、心構えをするにはいいけど、かなり細かい
国際経営とITのコンサルタント、アラン・バートン=ジョーンズによる、
約 380ページ(邦訳版)におよぶ大著。翻訳本にありがちな、稚拙な日本語訳は登場せず、
感心するほど、こなれて理解できる、自然な日本語訳である
ところが特徴です。
本書は、かなり広範囲にわたる分析、提言を行っていますが、
その分析の根底にあるのは、
ナレッジ=形式知、暗黙知、という野中郁次郎先生
の提唱する考えに成り立っています。
本文もさることながら、野中先生のあとがき(11ページもあります)も、
内容が充実しており、形式知、暗黙知の話と、
グローバル資本主義からナレッジ資本主義への移行にすいて、
おおいに勉強になります。
本文が、かなり詳細で深堀をしているので、論点を見失いがちですが、
そこは、各章に最初と終わりに、要点が書かれていることと、
最後の野中先生の11ページにおよぶあとがきで、全体の理解を整理する
ことができるようになっています。
中身自体は、歴史的な資本主義の発展から、知識(ナレッジ)
資本主義への移行、それを阻害する要因、促進する要因、
それから個人、従業員などのワーカーの範囲まで、
企業自体とその戦略に関する、政府を含む、
すべてのステークホルダーごとに、実体分析、その変節
の状況、予兆、べき論、提言などを、膨大な各国の統計データの
分析をふまえて、知識資本主義時代での、
各ステークホルダーの
とるべき態度を、細かく分析、展望しています。
特に、大企業以外の知識企業形態 - 中小企業、マイクロ企業
(個人事業者など)パートタイマー、契約社員、専門家
(医者、弁護士など)に及ぼす知識社会化の影響、現在の姿、
阻害要因、促進要因、経済体制、
社会体制、社会基盤など豊富な視点、観点から、具体的な企業やNPO、
政府活動などをあげながら、丁寧に、かつ、紙面をさいて分析し、
転換期における政府の役割の重要性を提言しています。
また、ITが、知的社会、ナレッジマネジメントに及ぼす影響は、
特に、技術、応用、市場面から、詳しく考察されています。
ただ、欲を言えば、膨大なデータの分析や各種学説を元に手を広げた
わりには、本書が何を提言したいのか、という焦点がぼやけてしまった
感はあります。私の理解力のなさで消化不良を起こしたのでしょうか。