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信長の棺

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信長の棺の商品レビュー

2.0 小説である必要がない
確かに、続きが早く知りたくてついつい読み進んでしまう内容ではあった。また、そうして辿り着いた「結論」も、まず面白いと言えるものだろう。
だけど、これだけのページ数を費やす意味のあるものだったかといえば……。

とにかく、歴史ミステリとして見たときに、主人公(=探偵)があまりに活躍しなさすぎだと思う。動き回ってはいるものの、発見も中途半端なら推理も中途半端。重要な新事実は基本的に、偶然や他人によってもたらされる。あまつさえ、最終的な「真相」までも。

また文体も、文意はよく伝わるのだが、小説としてはこなれない雰囲気で、ちょっと稚拙さすら感じる。有り体に言うと、おっさんくさい。
構成も、時系列上をあちこちに跳び回るところが多く、もどかしい。新聞連載だから仕方ない部分もあるだろうけど、通して読むとやや辛い。

『歴史読本』かなにかの一記事として「結論」だけを発表してくれれば、丁度よかったのに。
5.0 意外な視点から本能寺の変を衝撃的な仮説を描く
 『信長公記』を記した太田牛一を主人公に、織田信長が覇権を握り本能寺の変に倒れるまでのプロセスを生き生きと描く。

 これまで、本能寺の変を起こした明智光秀の動機として様々なことが語られてきた。明智光秀の恨念説、イエズス会陰謀説・・・。本書では、これまでの一般的な学説とは一線を画し、新たな仮説をたてて本能寺の変の解明を試みている。著者の卓越した歴史観・宗教史観のたまものと言えよう。

 また、歴史小説としても読みやすい。途中若干間延びすることはあったが、終盤は一気にテンポがあがりどんどん読み進めていくことができる。本能寺の変のナゾを解明していくプロセスを、主人公太田牛一をともに歩めるのも楽しい。

 可能であるならば、本書を読む前に一般的な「本能寺の変」関係の書籍にあたり、一般的に学説として確立している本能寺の変の動機を押さえておきたい。既存の学説と対比することで、本書のアプローチの斬新さが一層高まるだろう。
4.0 史料に裏づけされたフィクション
おそらくは秀吉嫌い&信長好きであろう作者が書いた歴史ミステリーは、読前に一通りの予習をされておくことをオススメしたい。<本能寺の変>を核に、<桶狭間の戦い陰謀説>や<信長遺体喪失の謎>についての考察は、確固たる歴史的裏づけの元に堅牢に構築されてはいるが、基礎知識をある程度備えていないとその醍醐味を十二分に堪能することは難しいだろう。

歴史的価値が高いとされる「信長公記」「大かうさまくんきのうち」を著した、実在の人物太田牛一その人が、信長に関わった人物の証言や書物などから<信長の棺>を探し出そうとするくだりが、膨大な史料の空白を緻密な推理で埋めることにより本書を書きおろした作家加藤廣自身の姿と重なっている点が、読んでいてとても面白かった。

キリスト教の聖杯の秘密を暴こうとした「ダヴィンチ・コード」を思わせる結末は、若干フィクションが勝ちすぎているような気がしないでもないが、<勝者によって書き変えられた改竄の積み重ね>を史料とだけ思っている人たちにとって、<日本の歴史>を見直す新しい視点を与えてくれる好著であることは間違いない。
3.0 信長の死にまつわる謎解き

本能寺の変において信長の遺骸が何故発見されなかったのかに関しては以前から疑問に思っていた。本書はその謎に対して作者なりの解答を出すことを試みた意欲作だ。その謎を解明する過程で、明智光秀が謀反を起こすに至った理由や、桶狭間の合戦の合戦の裏側や、豊臣秀吉の出自などについて斬新な解釈が行われており、興味深く読むことができた。

ただ小説としてどうかというと、良い小説につきものの読み終わった瞬間の面白かったという充足感がなく、欲求不満というかすっきりしない感じ残った。その理由としては、冒頭で大げさに登場した信長からの預かり物である木箱の中身や目的が、終盤で明らかになってみると冴えない内容であったこともあるが、信長や秀吉といった英雄の姿が矮小化して描かれている感じがする点が大きいと思う。いっそのこと、主人公の太田牛一になりきって信長に対する思い入れをたっぷり入れ込んだ作品にすれば、もっと感情移入できる作品になったのではないかと思う。

4.0 プロット上等
なにかと話題の作品を、遅ればせに読んだのですが、期待にたがわぬ作品でした。

ビジネス世界に生きてきた著者は、作家的な洞察力も磨いていたというわけでしょう。

往年の山岡、司馬といったお歴々が書いてきた信長像だけにあきたらぬ人にはお勧めです。
とくに、山岡作品では、信長・秀吉・家康が基本は大の仲良しなので……そのあたりの考え方の変転に思いをいたした次第です。

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