経営を考える上でのゲーム理論の定番
「コーペティション経営」の文庫版。単行本は入手困難になったが、文庫版として入手しやすくなった。名著の古典入りということか。 ビジネス書に書かれている通常のゲーム理論の枠組から離れて、競争相手との競争という側面だけではなく、協調という側面を取り入れたフレームワークを提示している。通常の経営戦略論では、この視点がない。具体的事例も豊富で、ついつい引き込まれていく魅力があります。
KSFが何かを考える場合のヒントも豊富です。訳出も特に問題がないと思います。モジュール化・プラットフォーム化の動きの中で、アライアンスを考える場合有益なヒントがあると思います。例えば、ポーターが競争の戦略の中で、エマージングマーケットでパイオニアが負担しなければならない業界立上げ費用が必要になることを指摘していますが、この立上げ費用をうまく分担する方法としてコーペティションがあると感じました。
ビジネス書として売られているゲーム理論の本を読み終わった後でも、読む前でも新鮮さがあると思います。お薦めします。
ビジネスというゲームを生き抜くために
スポーツとはゲームである。そしてビジネスもまたゲームである。しかし同じゲームではない。スポーツは、決められたルールの中で行われる。野球であれば、必ず1チーム9人で行われ、規格どおりのバットとボールが使われる。私たちが変えられるのは、作戦と選手の能力だけである。一方でビジネスとは、最低限のルールしか存在しない自由なゲームである。法律に違反しない限り、プレイヤーの数を増やすこともできれば、使用する道具(商品)を変えることもできる。つまり、ゲーム自体を自由に変えることができるのである。本書が伝えているのは「ビジネスをゲームと見立て、自社に有利になるようにゲームをデザインする方法」である。そこでは、競争と協調という2つの要素が重要な意味を持つ。たとえば、どちらかが負けることになる野球では、両チームが協力し合うことはない。しかしビジネスというゲームでは、双方が勝者になることもある。そのため、競争だけではなく、協調するという選択肢が存在する。競争によるリスクを軽減する目的で行われる、ライバルメーカーへの製品のOEM供給などは典型的な例である。
「常に競争と協調を同時に考えているか」「自社を取り巻く相互依存関係をすべて把握し、ゲーム自体を変えるという考えを持っているか」と問い掛けることは非常に重要である。
本書における豊富な実例の解釈から「定石」を学ぶことで、ゲーム理論をビジネスへ活用する道が見えてくるであろう。