現実経済の説明能力が上がる
経済学が想定する、人間像つまり超合理的・超自制的・超利己的といった前提を現実的に緩めることによって現実を説明しようとすることが本書(行動経済学)の目的です。内容は、①現実の人間には完全な最適化行動を選択できるほどの計算能力や認知能力はなく、限定合理性を持つ。限定合理性はそれ自体の影響に加えて合理的な人々の行動も変化させることを通じ市場全体にインバクトを与える。
②限定合理性は不確実性を評価する問題認識の局面で生じる。一般に人は複雑な事象をある程度合理的な行動(近道選び)で対応しようとする。近道選びには、代表性・利用可能性・係留効果(本質と関係ない情報にこだわってしまうこと)が知られている。また、他にも自身過剰や認知不協和といった性向も問題認識プロセスをゆがめる。
③更に期待効用仮説に反するものとして、損失回避・得する局面での危険志向性・確率ウェート関数といったプロスペクト理論で説明されるものがある。プロスペクト理論や「心の家計簿」といった考え方で現実の人々の経済的行動は説明可能となる。また、超利己性への批判として、相互応報性は特に注目に値する。労働契約や賃金の硬直性などの説明に現実的な応用範囲を持つ
著者も述べていますが、こうした研究は現実に対する説明能力を高める一方、(本書を理解すれば、間違いなく高まります)ではその成果をどう生かしていくのかが、読んだ人の課題になるのでしょう。