単なる法律の本を越えた一冊
この本は、日本および諸外国の「性同一性障害」に関する判例や法律を集めた本です。でもこの本のすばらしさは、集められた文献、事例のその多さではありません。(もちろん、その量には圧倒されますが)
この本は、「性別適合手術を完了した性同一性障害の人々の戸籍上の性別表記を認めるべき」という、筆者の熱い熱い思いが込められた本なのです。随所にちりばめられた私見やコメントから、その思いがヒシヒシと伝わってきて、読んでいる者の胸を打ちます。性同一性障害の当事者というわけでもない筆者が、なんでここまでの熱情を注げるのかしらと思うと、まったく頭が下がります。
もはや、単に法律の専門書を越えた珠玉の名作と言って過言ではないでしょう。
法学本の宿命
日々移り変わる法律を扱う本の宿命として、
出版したとたんに古くなる(正確には「校了したとたんに」だが)というものがあるが、残念ながらこの本もそれに嵌ってしまった。端的に言えば、今年7月11日に出たばかりの、画期的な欧州人権裁判所の判決である。
その判決のインパクトを踏まえる限り、本書のかなりの部分は書き直しを迫られることになろう。
わたしも本書に示された大島氏の仕事を高く評価する。
しかし、この本をただの研究発表論文集として本棚に飾って置くのではなく、裁判等の実務に生かそうとするのであれば(著者の希望もきっとそこにある)、
常にアンテナを高く張って、最新情報にも気を配る必要がある。
せっかくインターネットというツールがあるのだから。
その意味で本書の評価は★不可思議くらいにしておきたいと思う(笑)。
世界の誇れる一冊
驚嘆の一冊である。
評価の星が5つまでしかないのが恨めしい。星無量大数である。
性同一性障害に関わるあらゆる法律問題を、世界中の判例を示しながら論評している。
一人の学者でここまでの研究をするとは戦慄すら覚える。
広範に集められた基礎資料の量、それらへの正確な理解、更に根底に流れる方の正義を愛する魂、どれをとっても特上品である。このような書物は世界的にも例がない。
まさに世界に誇れる日本の知性の一冊である。