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ゲーデルの不完全性定理は、簡単に言うと、ラッセルの論理学体系の中ではその完全性を証明できないというものです。これによって20世紀前半に起こった数学基礎論をめぐる論争は一応の終止符を打たれます。物理学におけるハイゼンベルグの不確定性原理と共に20世紀の近代科学のアンチ・クライマックスの一つでした。そういう意味で想像を掻き立てられるものです。特に哲学ではよく話題になります。しかし哲学畑の人がゲーデルのことを書いているのを読むと、なんとなく怪しい感じがします。ゲーデル晩年の哲学的な発言をあたかも哲学者の発言であるかのように、あれこれ取り上げているのを読むと、何か違うような気がします。ゲーデルは数学的な存在を信じていた実在論者だったとかいう話はラッセルが経験論者だったという話とは全然違うと思います。数学が得意な人には数学的対象が実感できるというだけで、武術の達人が人の気配を感じるのと同じような話だと思います。アインシュタインが神の話をしたからといって、神に近かった訳ではないでしょう。ゲーデルについては数学者が書いたものを読むに限ります。特に本書の著者は集合論の第一人者ですし、信頼できます。