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中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義

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中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義の商品レビュー

5.0 インドカリーの複雑な味
 本書は学術書でありながら、ドキュメンタリーや小説のように一気に読ませる力を持っている稀な作品だと思う。登場人物は誰もが主役にできそうな経歴の持ち主で、その一人一人が、任侠心や愛国心や東洋の理想に燃え、体を張って歴史に関わって行く姿が(そして歴史に翻弄されて行く姿も)良く描かれている。彼らの多くは戦後、右翼、テロリスト、反動思想家等々とラベルを貼られてしまったかもしれないが、事実はそう単純でなかったことが本書を読むと良く分かる。
 一説には今日の英国の代表的料理と言えばカレーだそうである。してみると英国はかつて植民地化したインドによって文化的侵略を今受けているのかも知れない。カレーの中には様々な材料があるが、どれも癖のあるものばかりで、生で食べれるようなものはない。しかしそれらが合わさり長い時間かけて煮込まれると実に複雑で奥の深い味になる。『中村屋のボース』に出てくる人々が織りなした歴史はまるでカレーのようだと思いながら、今夜の和風カレー・ライスを我ながら神妙な気持ちで食べた。無論、R.B.ボースは本物のインド・カリーを食べさたいと思っていたことだろうが・・・。
4.0 面白い!!
おもしろい本である!!一気に最後まで読んだ。まず、選んだ題材が良い。遠いインドのボーズと身近な中村屋のカレーとが交互に織りなす遠近感は絶妙だ。本書を読めば、新宿の中村屋に一度は行ってみたくなる。ボーズの一生を最初から最後まで書ききった点も評価できる。また全体のバランスもよい。歴史的知識がなくても、最後まで読める本である。

だが、他の人も指摘しているが、後にパール判事で評判をさげた欠点も目につく。

作品の作りはやや荒い。外相や蔵相ですら出席できなかった大本営の会議になぜかボーズが出席したりする。R.B.ボーズ『印度を語る』(日本電報通信社、1943年)、同『印度侵略秘史』(毎日新聞社、1943年)といったR.B.ボーズの著作も参考文献にあがっていない。

また解釈に疑問のある箇所もある。たとえば、306頁。日本軍(参謀本部第二部)がインドの反英運動が反日独立運動に転化するのをおそれて、作戦を中止したというストーリー。あまりにもひどい話しだから、憤慨して出典の波多野澄雄氏の本を読んだら、「作戦が中止された直接の理由は、8月初旬に始める南太平洋方面(ガタルカナル島)での激しい攻防戦による国力の消耗が、作戦の物的基礎を奪ったことにあり、必ずしも第二部の意見によるものではない」と書いてあった。

それでも、著者の豊かな叙述の才能を十分に感じることのできる一冊である。インド研究者の長崎暢子氏が本来のインド研究に立ち返るように勧めているが同感だ。
5.0 幻の反植民地闘争・インド独立戦争の根拠地「戦前・戦間期日本」
 植民地インドの官僚の位置にありながら反植民地闘争を戦い、植民地当局に追われ日本に亡命した大英帝国の植民地インド独立の闘士が、日本の亜細亜主義者や様々な政治・文化潮流と交流しながら、「中村屋のボース」と呼ばれる人生を選び取った姿を、戦前期の南西アジア、中国大陸、東南アジア、世界情勢を視野に入れながら中島岳志が活写した一冊。
 帝国主義・欧米の白人優位主義と戦いながら、日本軍の「傀儡」との謗りを受ける立場を選び取る「中村屋のボース」=R・B・ボースの「恋と革命の新宿中村屋のインドカリー」を物語を縦糸に、亜細亜主義者の「大東亜」の物語が花を添える。
 忘れ去られた物語に、中島により今一度命を吹き込む再生の物語でもある。
4.0 良く書けてはいるが
ボースの歩みと、当時の日本に、既にアジア主義的な物が、人道主義と結びついていた事は、現代と変わらぬ物を感じ、興味深い。そんなアジアで唯一、独立して自国を防衛していた日本にやって来るインド・中国のアジア主義者達。しかしアジア主義、三国は、その後の現実の前に破綻していく。ボースもまた、反英以外が見えなくなり、インド本国人からも、日本の代弁者と見られてしまう。痛々しい。

今となっては、インドも中国も立派な、独立した大国である。しかし、良く知られている中国の様々な問題。それは、ボースが夢見たような「帝国主義を超克した東洋」とは程遠い。

現代にも残る、アジアと近代という興味深いテーマを扱い「ヒンドゥー・ナショナリズム」もそうだったが、「活動家・革命家」の理想と現実の描写も楽しめる。

ただし、頭山らのアジア主義、ボースの発言や、相馬一家の心情の解釈、「大東亜」戦争についての記述など、どうしても「敗戦」という結果から逆算し、「日本帝国主義」に繋がれば、無理な論法を使っても否定しているような、首肯出来ないアプローチも共存している。

後の「パール判事」論争で名を落とした原因は、既に胚胎していて、あの後だと、素直に信じることが出来ない箇所も多い。

とはいえ、R・B・ボースを現代に蘇らせた「光」の部分は素晴らしい。今後必要なのは、著者を祭り上げず、的確に指導出来る評者だろう。そして著者が「主観」を投影せず、あるがままを、思想と異なっても書くことに注意し、読者に「苦言」を呈さなくても、おかしな解釈には結びつかないと信じる事だろう。そうすれば更に質が高まるだろう。
5.0 新しい視点!
この時代のことを、こういった角度から眺めるというのは新しい視点で、ためになりました。

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