邱永漢の面目躍如
1982年から1年8ヶ月にわたって雑誌に連載したものを単行本にしたのを文庫化したもの。
今から10年以上前に書かれたものだが、将来の予想がかなり的中しているのに驚かされる。 また、成田空港について、産業の観点からのみ、反対するのはばかげていると切って捨てているのが、邱永漢の面目躍如というところで、それまでその土地で畑を耕していた人たちの気持ちよりも、人間が集まり商業の発展につながることの方がずっと大切だと完全に割り切ってしまっている。
社会的正義などというものは問題にしないのだが、では、邱永漢が工場を造ったら公害を垂れ流しにするかというと、おそらくそうはしないだろう。
公害問題で訴えられれば結局は大きな出費を強いられることになり、それだけ経営が不安定になるから、それをみこして純粋にコストの面だけから公害を出さないようにするだろう。
最も印象に残ったのは次の箇所である。
「この世の中、頭のよい人でないと成功しない、とすれば、生まれつき頭の鈍な人は、とうてい見込みがないことになる。事実、その通りで、頭の回転の悪い人は頭の回転のよい人に使われるめぐりあわせになることが多い。」(p201)
ここでいう「頭のよい人」が学校の勉強が出来る人、という意味ではないことは言うまでもない。