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社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)

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社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)の商品レビュー

4.0 社会的ジレンマ状況の解決に向けて
本書は囚人のジレンマに代表される社会的ジレンマ状況をめぐる議論が
書かれてある。
すなわち社会的ジレンマ状況でいかに相互の協力が可能かということを
問いかける。「万人の万人に対する闘争」としてホッブズ問題と呼ばれ
るこの手の問題。利己的な遺伝子のドーキンスや繰り返し囚人のジレン
マの生存競争のアクセルロッドなどは、各人が利己的に行動したとして
も秩序(協調−協調の組み合わせ)は可能だと主張している。論者によ
っては、ホッブズが国家権力を挙げたのと同様に、規範や慣習といった
自生的に秩序が生み出される仕組みを述べたりしている。

けれど、こうした社会的ジレンマ状況でいかに秩序が可能かという問が
ゲーム理論的に解決されたというわけではない。なぜなら、実際の社会
状況を想定するならば、環境問題などのように囚人のジレンマが複数あ
るいは膨大なプレイヤーのもとで行なわれるからである。
本書で著者は、人が協力を選ぶのはどういった(インセンティブが働いた)
ときなのかについて論じる。結論が実行力があるかどうかはわからない
が、分析を平易に論じているので読んでいてわかりやすかったし、楽し
かった。

疑問点としては1点だけ残った。
それは、囚人のジレンマゲームを実験では500円スタートで始めているが
これを5万円ぐらいにしたらどうなるのだろうか、というものだ。私は
500円の場合なら喜んで相手に協力すると思うが、5万円なら非協力を選択
しそうである。実験のなかでの選択なので、部分的には「500円ぐらいで
実験実施者たちに『みみっちいやっちゃ』と思われたくない」という心の
動きが被験者たちあったのではないかと感じた。
(P.180‐181の著者の主張通り)5万円にして500円のときよりも協力を
選ぶ人が増えれば、もうお手上げ、著者の論に感服していたところです。
(著者は、自分にとって重要性が増せば増すほど囚人のジレンマ状況を
 「みんなが」状況に読み替える傾向にあるという主張をしていたので)

あと、人間は進化過程で特定の認知枠組みを手に入れた云々という記述が
ある。ここは引っかかる人が多いと思う。「社会生物学」をキーワードに
検索するとその手の研究がみつかるので読んでみるのもいいかもしれない。
(進化論自体がほぼ検証不可能の仮説なので、実証されているわけではな
い。一応の注意)
2.0 確かに斬新ではあるが…
どうも実験の状況が現実と乖離しすぎているような気がした。
話が一般化されているようで、一般化されていない。解決が急務な「社会的ジレンマ」は
複雑な要素が絡み合っているわけで、例えば宗教的対立や、貧困が問題に絡んできたときに
この理論は応用が利くのか疑問。最初の方で挙げられている実験もくどい。
5.0 「みんなが」原理の効力
みんながやれば解決できて、みんなはより多くの利益を得られるのに、一人だけが協力してもバカを見るだけ。環境問題やいじめといった、こうした社会的ジレンマに対する考察。

囚人のジレンマから始まり、実際の実験を条件を変えながら繰り返し行うことで、ゲーム理論に基づく利己主義をも上回るあるものが、社会的ジレンマを解決していることに筆者は気づきます。

それが「みんなが」原理です。

さらに、筆者はその「みんなが」原理が生かせるような環境作りも考えて生きます。

この「みんなが」原理がどういうものか知りたい人は、ぜひこの本を読んでみてください。
5.0 社会心理学に興味がなくても読める一冊
山岸 俊男氏の功績を知らずとも、ちょっと気になる一冊である。意地悪な言い方をすると「何故、昨年のクールビズが成功したのか?」など日常当たり前と思っていた行動には人の無意識の中に潜在する行動の結果である事が判り、「何故?なに?」の問題についての解決方法の1つとなりえるであろう。


5.0 社会に参画する上で必読の一書
著者は社会心理学で名を馳せる山岸氏である。
本書は、安価な新書シリーズではあるが、非常に分かりやすい言葉と
例えを用いており、この分野に精通していない方でも理解できる。
「わかっちゃいるけどやめられない」という誰しもが知っているフレーズから
スタートして、社会全般に広がる個人と公共の矛盾点を鋭く導く。
そして「本当のかしこさ」とは何か、見事な命題を読者に与えてくれる。

途中説明に用いたゲーム理論は、説明で使う核心部分を優しく説明しており、
コミットメント問題の例えに使ったダイエットの話、
継続ゲームの例えに使った観光客向けレストランと常連客向けレストランの
違いなど、適切な目線で分かりやすい例を多用している。
難しい言葉の多い、社会学、社会心理学の読み物としては、
これ以上ないぐらいわかりやすい。
扱っている命題は人間であり、社会である。
オフィス、学校など人が2人以上いるところに有効な考え方であり、
適応範囲は広い。

途中で著者が語っているように、本書の発端となったのは、
新しい仮説により著者の考えが変ったことに依拠する。
新しい仮説をきちんと消化し、柔軟に思考する点は、研究者として尊敬できる。

本書は鋭い示唆に富み、我々一般市民に考えさせる命題を与えてくれる。
万人が電車の中でも読んでくれれば、世の中ましになるかもしれない。
高校生以上でないと理解できないかもしれないが、ぜひ読んで欲しい一書だ。

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