社会に参画する上で必読の一書
著者は社会心理学で名を馳せる山岸氏である。
本書は、安価な新書シリーズではあるが、非常に分かりやすい言葉と
例えを用いており、この分野に精通していない方でも理解できる。
「わかっちゃいるけどやめられない」という誰しもが知っているフレーズから
スタートして、社会全般に広がる個人と公共の矛盾点を鋭く導く。
そして「本当のかしこさ」とは何か、見事な命題を読者に与えてくれる。途中説明に用いたゲーム理論は、説明で使う核心部分を優しく説明しており、
コミットメント問題の例えに使ったダイエットの話、
継続ゲームの例えに使った観光客向けレストランと常連客向けレストランの
違いなど、適切な目線で分かりやすい例を多用している。
難しい言葉の多い、社会学、社会心理学の読み物としては、
これ以上ないぐらいわかりやすい。
扱っている命題は人間であり、社会である。
オフィス、学校など人が2人以上いるところに有効な考え方であり、
適応範囲は広い。
途中で著者が語っているように、本書の発端となったのは、
新しい仮説により著者の考えが変ったことに依拠する。
新しい仮説をきちんと消化し、柔軟に思考する点は、研究者として尊敬できる。
本書は鋭い示唆に富み、我々一般市民に考えさせる命題を与えてくれる。
万人が電車の中でも読んでくれれば、世の中ましになるかもしれない。
高校生以上でないと理解できないかもしれないが、ぜひ読んで欲しい一書だ。