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ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書)

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ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書)の商品レビュー

3.0 格差社会にハイエクは無力
ハイエクの生涯、その徹底した自由主義的主張、現在でも語り草となっている経済学の重鎮、ケインズとの論争まで詳細に記しているのは非常によい。全体としては非常に良書だと思うのだが、これほどまでに現代日本社会で『格差の拡大』が騒がれているときに、あろうことか池田氏は本書の中で『もし格差が広がっているのだとしても、一体どうしろというのだろうか』とまさかのブン投げ宣言をしている。これは非常によろしくない、と一個人の視点から思う。知識のある人間が困っている人間に対して『どうしようも出来ない』と言うのでは、一体なんのために学者になったのかわからないではないか。自ら得た知識で貧困にあえぐ人々を何とかしようと思わないのか? というわけで星は三つとしておく。現在日本で進行する新自由主義を批判的に見るための視点を養うもよし、単にハイエクに対しての理解を深めるために読むのもよし、と言う風に突き放して読めるならいいが、池田氏の主張が出すぎているのはやはりマイナスポイントであろう。
5.0 無類の歯切れのよさ
 最近ハイエクの名前を聞く機会が多いわりに 彼に関して何も知らないことに気が付き 本書を読むきっかけを得た。大変勉強になった。

 ハイエクが主張したという「計画経済への疑問」には大いに共感した。

 僕も かつて ビジネススクールで二か月勉強した際に そこで扱われる「合理的人間」というモデルに非常に疑問を感じたことがある。完全に合理的な判断を人間ができるという大前提で展開される各種議論は 議論している人が特に合理的でない議論をしている点で 首を傾げたのだ。
 スクールでの議論であるなら どのように「漂流」しても良いが 一国の経済を考える際にも基本的に同じ前提で考えるとしたらどうなるか。それには非常に慄然とする思いだ。まさにハイエクが主張した経済学の理論への疑問が 僕の かような不安を代弁してくれた思いである。

 「新自由主義経済」という言葉の中の「自由」とは何を指すのか。僕らが不用意に使う「自由」とはどういう意味なのかをハイエクは迫ってきている。計画経済の否定が そのまま市場原理主義にはならない点が 本書を読んで強く実感した。市場原理主義と自由とは 一見似ているようで おそらくまったく違うものであろうという予感を覚えた。

 僕はハイエク関係を読むのは本書が初めてなので 本書がどこまで厳密に正しいかはわからない。ただし 著者の無類の歯切れのよさは読んでいて心地よい。続けて二回読んでしまったほどだ。大変 「考えるヒント」になったことを最後に付け加えたい。

1.0 池田氏の著作を初めて読みました。
とりあえず図書館から借りて読んでみた、感想だけ。。
ハイエクとケインズを中心に哲学者の名前が出てくる。カントもマルクスもヒュームもポパーも。無理やりでウィトゲンシュタインも。はっきりいうと池田氏の西洋哲学の説明より、独自の保守思想を打ち立てた西部邁のケインズ・ハイエク・ウィトゲンシュタイン解釈の方がはるかに説得力がありおもしろかったね。

また著者は「ケインズは死にきった」と思いたいらしい。
30年代アメリカにおける財政出動、90年代日本における財政出動の有効性は著者が嫌っているR・クーが「陰と陽の経済学」において実証してますし、バブル崩壊後の日本の問題は生産性に限らず需要・供給側ともに問題があったと貞廣氏の「戦後日本のマクロ経済学」によって実証されているし、誰もが認識していることでしょう。ま、社会科学だしそこんとこは適当にってノリかな?しかしまぁ財政出動が効かないってどこの国の学者がいうんでしょうね。

で、ネットで自生的秩序が形成ってねぇ。。
現実社会に生きる人間たちにまともな秩序経験がなければ準現実社会のインターネットで育つのは自生的「無」秩序でしょうね。なので現実社会の秩序をまず考えたいところ。公共意識というかな。しかしインターネットという仮想空間のお話で「自生的秩序」が持ち出されるとはハイエクが生きていたらなんと言うでしょう。

結論
ってかハイエクをわざわざ持ち出すような中身か。仰々しい。そう思えてならない。
4.0 良質のハイエクと経済学をめぐる入門書
本書はハイエクの生涯を通じて、ケインズ経済学との方法的な違い、
新古典派との違い、ポパーとの違いなどを描き、
現代のインターネット社会での自生的な秩序についても
ハイエクをその先見者とする。

実際、ケインズは大恐慌時代に適合した経済政策をアジテーションした
ポリティシャンであったが、ハイエクは学者であった。
またフリードマンはアメリカが生みだしたプラグマティスとであったが、
ハイエクはメンガーからのウィーンの知的伝統を受け継ぐ哲学者であった。

通常、ミクロ経済学では、
市場を論じるときに需要と供給があたかも公知の事実であるかのように描かれるが、
ハイエクの属するオーストリア学派の伝統では、
市場においてのみ価格メカニズムを通じて、
生産者のもつ生産知識と、購買者の感じる主観的な商品価値が明らかにされる。
この意味で、市場は分散的に存在する知識を交換、活用する最良の手段になる。

本書はこの点をはっきりとさせつつ、ハイエクの多様な主張をまとめている。
読んでいてあきず、経済学説、学説史をめぐる思索もできる良書だと感じた。

5.0 ハイエクの素人向けサーベイとして格好の入門書
ハイエクの決して経済学に納まらない思想や理論の学説史的変遷を縦糸とし、これに経済学者や哲学者との論争あるいは近代から現代までの経済事象、そして実際に採用された政策の成否などを横糸として絡めながら、その広範な業績の近未来を見据えての現代的意義を概説したものである。私のような一般人にとって、理解しやすく大変参考になる。

一般に「専門的な論文を読むときは、いきなり細かい話を読む前にサーベイ論文を読むといい。」と言われるが、本書も、ハイエクの思想についての素人向けサーベイとして格好の入門書と言えるのではないだろうか。

新古典派経済学や社会主義に対する深い批判的論拠を提起したハイエクの先見性への再評価に止まらず、広範なハイエク周辺の社会・思想・哲学的諸問題に関する、現代社会との関係性についての示唆に富む多くの考察を著者が行っているからだ。

また、ハイエクの二十一世紀的意義を「情報ネットワークが社会のインフラになる知識社会のあり方を考えるうえでも、情報コストをゼロと仮定する新古典派経済学は何の役にも立たないが、ハイエクは多くの示唆を与えてくれる」(P.188)とし、
「われわれは、ハイエクほど素朴に自生的秩序の勝利を信じることはできないが、おそらくそれが成立するよう努力する以外に選択肢はないだろう。」と著者は最後に総括している。私のようにどちらかと言うと、「自生的秩序」に懐疑的だった者にも、激しく同意を迫る、説得力のある内容となっている。

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