命とは、だいじにだいじに、はぐくみ、いつくしみ、育てるもの
まだ学校に上がらないちっちゃい子も、小中高校生から大学生も、大人になってしまった人も、みんな、みんなよんでほしい。 ゴンタの39態をゆっくりみつめてほしい。
どのゴンタも生き生きとえがかれています。しっぽの先っちょ、うしろ姿に作者のゴンタへの愛情をひしひしと感じます。
ゴンタは決して名犬ではありません。
別に人助けをするわけでもありません。人間に奉仕するわけでもありません。ふつうの犬としてのびのびとほんぽうに生きています。喜び、冒険し、迷い、傷つき、躍動し、悲しみ、そしてついには静かに老いて死んでいきます。その一つ一つをお父さん、お母さん、ゴンタは共有していきます。
一枚、一枚、読み進めるうちに、静かな感動が、喜びが心の中に芽生えてきます。いつのまにか涙にくれつつ、ゴンタとは友だちになっています。これこそ生きる喜びにほかなりません。
まぎれもなく、黒澤明氏の「生きる」が映画史上さんぜんと輝く第一級の作品であるのと同じく、人類史の財産であると思います。
万巻の書にも書きつくせぬ生命の尊さを、喜びを、か弱さを教えてくれます。いや心のしんから感じさせてくれるからすばらしい。
佐世保の小学6年生同級生殺人事件の直後に、この本が出た意義は大きい。「仲良し」だった同級生が数ヶ月のうちに殺し殺される関係になる現代の悲劇性にこの本はしっかりした解答を与えてくれています。
本来人間はある非日常の行動をとる場合立ち止まり、思い悩み、逡巡する。この逡巡の中に命とは何か、生きるとは何か、自分の生命とは、他人の生命とは、と考えて成長していく。また、家庭内、学校内、友人間で「命をはぐくむ」体験を通して成長していく。
この渡辺氏の新著は読者に「命とは、だいじに、だいじに、はぐくみ、いつくしみ、育てるもの」と感じさせてくれるでしょう。
あの少女が実行する前にこの本を手にして考えを深めていてくれていたら…