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バカにつける薬 (双葉文庫)

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バカにつける薬 (双葉文庫)の商品レビュー

3.0 呉智英は馬を仕留めたか
 本書には、呉智英と岡庭昇(文芸評論家)の論戦が収録されている。そこで呉智英が槍玉にあげているのは、岡庭昇の「女体は思想である!」なるSM文学を論じた一文である。
 岡庭昇は「日夜サベツ摘発運動に活躍している実践派知識人である」にもかかわらず、女性差別にまぎれもないSMポルノを擁護するという自己矛盾に陥っている、というのが呉智英の批判の主旨である。
 岡庭がいわゆる「糾弾屋」的な人物なら上記の批判も当てはまるだろうが、私は怪しいと思う。先年亡くなった古賀忠昭の詩「エッタ」が部落解放同盟の糾弾を受けたとき、古賀を擁護して解同の理論家・土方鉄と論争したのは岡庭昇である。岡庭が呉のいうような単純な差別糾弾運動家だとは、思えないからだ。
 呉智英の批判の対象となった岡庭昇の文章のベースになっているのは身体論である。彼のいう「身体」とは、要約していえば、ふだん私たちが当たり前のものとして見ている日常の皮膜の下にある、混沌として形の定まらないブヨブヨした存在ということなのだろう。SM文学は、その皮膜に破れ目をつくって、その下に隠れている存在を垣間見せてくれるものだ、ということを岡庭は言おうとしているのだと思う。
 これは一種の形而上学ではないかと私は思うが、批判するなら、文学論から差別論にまで通低する岡庭のこうした考え方を正面から批判すればよいことだ。岡庭の主張を矮小化して叩く呉智英のやり方が、私には訝しい。
1.0 人にバカだと言いがるのは自分がバカそのものだから?
昔読んでその時は結構好意的に思ったんだけど・・・
今となってみると「くっだらねー」と思う
いろいろなものが、日本の社会とか日本は戦争にならないとか冷戦構造とか、信じられていて脳天気(そうそう、こういうつまらない誤用の指摘に大喜びするのが「くっだらねー」だ)な時代だったんだなあと思う

なんかもう「すべからく」理論とか「支那」理論とかおぞましくすら思えてゾッとする
ネット社会でシナというのははっきり蔑意のこめられた言葉になっているけれど・・・

5.0 「バカ」と「珍左翼」と「御都合主義」
呉氏によると、左翼は三種類に分類できるそうです。共産主義に思想的・政治的有効性があると信じている旧左翼。旧左翼の限界や病弊をマルクスの原点に還ることによって克服できると考える新左翼。そして、新左翼の限界を感じながらも思想的努力も冒険もせずに、思いつきの珍妙な理論を唱えて得意がっている珍左翼の三種類です。この本で「バカ」扱いされるのは、おもに珍左翼の人達です。

それに加えて御都合主義者も「バカ」扱いされます。人権、平等などを時と場合で使い分ける人達です。そして、珍左翼は、ほぼ間違いなく御都合主義者のようです。つまり、珍左翼イコール御都合主義者イコール「バカ」と言えると思います。

この本は八十年代に書かれた本ですが、現在も珍左翼に分類される人達や御都合主義者は日本の言論界には多く存在しており、呉氏の主張や批判は古びていないと思います。他にも吉本隆明や網野善彦、中島みゆきなどの考察が載っており興味深いと思います。
5.0 民主社長
本書の初版が発行された日(80年代末の夏)に、私は大型書店に入り、すぐレジの女の子に「「バカにつける薬」ありますか?」と訊きました。すると「申し訳ございません。当店では医薬品は扱っておりません。」と返事されました。でも「バカにつける薬」は医学書のコーナーにちゃんと置いてありました。フランスの「五月革命」以降、マルクス主義に怨念を抱く元闘士が続出したそうですが、呉さんの場合は、全共闘挫折後「民主主義」「近代主義」に対して殆ど個人的恨みに近いような怨念を抱き続けているようです。本書も例の内ゲバを言葉でやっているような印象があります。でも「民主社長」の続編は、書いていただければ幸せです。
3.0 知的エンターテインメントの一冊
折に触れて著者がさまざまな媒体に発表した文章を一冊にまとめたもの。一番売れた呉智英本という噂もあるから名前を聞いたことのある人も多いでしょう。呉智英に興味の湧いた読者は読んでおいて損はない。

たとえば、朝日ジャーナルに発表したものでは、日常からの疑問・こんなものいらない!?―「主催者側発表」なんてのがある。

たいていの場合、サヨク団体が動員をかけた集会の場合、主催者の発表する参加人数は水増ししたものが多い。それも二倍三倍はかわいいほうで、集会の意義を強調するために何十倍にも水増しして発表することもあるんだと。ここで呉智英は疑問を呈する。これはあくまで戦術的な策略であり、めでたく革命政権が樹立されれば、このような水増しをする意味はなくなる。そうなったとき過去の歴史上の集会の参加人数を訂正するのだろうか。それとも水増しされたまま永久に歴史に刻まれるのだろうかと。

読む者に、「目的は手段を正当化する」などといったサヨクの方法論に根源的な疑いを抱かせる名文だと僕は勝手に評価している。

それ以外に、おもしろクリティークの流れを汲むもの、ブックガイド風の読み物、マンガ論など、呉智英の魅力がちりばめられた一冊。

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