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日本残酷物語〈1〉貧しき人々のむれ (平凡社ライブラリー)

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日本残酷物語〈1〉貧しき人々のむれ (平凡社ライブラリー)の商品レビュー

5.0 日本の近代史を知る上で貴重なシリーズ
民俗学の書籍を二十数冊読んで辿り着いたシリーズです。
宮本常一で検索して出会った書籍です。
残酷というタイトルでは決して読まなかった本です。
昭和30年代に初版が発行され、版を重ね、体裁を変え現在に続くロングセラーのようです。
江戸時代から昭和30年代までの時代背景を知るには最適なテキストです。
読み進めると有名な宮本常一の口述筆記に何度か出会いますが、2度読んでも損のない文章です。
平凡社ライブラリーでは5巻までしか再版されていませんが、本来なら全7巻です。
今ならまだ当時の別巻1,2も古本で手に入ります。
これは現代編で出版直前の昭和35年位までの事柄が咀嚼されることなく反映されています。
全巻を読み終えて思ったことは、学生時代に読みたかった。
そうすれば、もっと歴史が理解できたし、儒教の精神ではなく敬老の念を抱いただろうと思います。
なめとこ山の熊や蛙団長はこんな時代に書かれたのだなと、人間の性の普遍性に畏怖します。
5.0 生活の実感
最近、書店を訪れると小林多喜二の「蟹工船」が平積みになっているのを見かけます。
さかんに叫ばれる「ワーキングプア」や「格差」という言葉が、近年にない生活実感を一般人に感じさせているのでしょう。
もはや過去のものとなった筈のプロレタリア文学の嚆矢が、今になって共感を呼び起こすのにはそういった背景があるのでしょう。

この「日本残酷物語」は、かつての日本の庶民の生活苦を描き出す作品です。
著者は連名ですが、中心となっているのは、あくなきフィールドワークに民俗学の真髄を求めた宮本常一でしょう。
庶民の視点からその生活の有様を生々しく語ってゆきます。
悲愴感溢れる序文は今となっては大仰の感も否めませんが、冒頭に書いたように、
今日本を覆う「切迫した生活実感」を考えれば、これすら再評価される可能性もあるでしょう。
一見洗練されてゆく近年の日本の風景の中にも、まだドロドロとした生活の実際は潜んでいると思うのです。
下層の生活への嫌悪や恐れの反面、過ぎ去ったこの国の生活への懐かしさも奇妙に内在している気がします。
本書の読後感が、単に陰惨な生活の衝撃だけでなく、ある種の憧憬と文学的な余韻すら感じさせるのは、
そういった精神の奥所を衝き動かすものがあるからでしょう。

食うことのみに拘泥する「生活苦」は単に過去のものではなく、時代が変わればまたいつ我々に襲い来るか分からない。
原油や食料原料の高騰、地球温暖化など、今我々の周囲を大きな不安が覆っています。
そう思った時、この「日本残酷物語」というタイトルも、単に悲愴に過ぎるとは言えなくなって来るのです。
5.0 心に残る話が満載
 久しぶりにいい本を読んだ、と感じさせてくれる一冊。
 山深いところにある私の田舎には、いつかは分からない昔、旅の座頭が村人に殺されて埋められたという場所があった。その座頭を殺したのがどこの家の者で、どこをどう追いかけてその場所まで行ったかということまで語り継がれていた。子どもの頃、その話は何か不思議な、ちょっと恐ろしいような話として記憶していたのだが、この本を読んでまたその座頭の話を思い出した。
 生活が苦しい山深い里の村で、生きていくために旅人をねらって生活していた村の話など、座頭の話ができあがっていく背景にあっただろう人びとの生活の一面がかいま見えたように思えた。もちろん、全ての山里の村が山賊をしていたわけではなかろうが、豊かな現代の生活に慣れきった私たちが思い描く山里の生活とは全く違った現実が、そこにはあったのだろうと思う。この本は、それがどのような現実だったのか、私たちにかいま見せてくれる。そしてそれは、山里だけではなく、海辺の人びとや乞食、子ども、老人などなど、様々な人びとの身の上に拡げられていくのだが。
 資料的検証といった側面での弱さは否定できないが、一方でこの本の初版が出版された1959年と言う時代には、ここに書かれているような民衆の生活やできごとは、人びとの記憶の中に残っていただろうと思う。この本が出版されたのと同じ年に生まれた私自身、自分の子ども時代の記憶の中に、この本に描かれた民衆の生活の残滓としてのかけらを、見つけることができた。
 全編飽きることなく読めたが、特に山民の話や乞食の話、間引きの話は心に残っている。また、土佐檮原の乞食の話は、民俗学者の赤松啓介の記述している話ともつながって、とても興味深かった。
5.0 「残酷」が現実だった頃
最近読んだ本で、岩波書店から出版された「敗北を抱きしめて」(ISBN 4000244205)には大いに考えさせられました。そこに記された大東亜戦争終了(敗戦)以降の歴史を読む中で、「うちのオヤジは、この戦後のドサクサを生き抜いてきたのか…、自分はそうした積み重ね(歴史)の中で産まれて来たのだ…」というナントも言えない感慨に襲われました。戦後の高度経済成長期以降に育った人間として、モノに溢れた時代の申し子として、思い上がり天狗になった鼻先をヘシ折られたような気分になりました。と、同時に、「日本中、みんなそうだったのだ。今生きているのは、みーんなその末裔だ。」という一種爽やかな感情も生じました。

この「日本残酷物語」は、オヤジの世代ではなく、そのまたオヤジ、またオヤジ、またまたオヤジ・・・くらいの時代のものです。残酷が現実、正真正銘の現実の生活だった時代の事柄です。

一時期流行したグリム童話等の怖い話などというのも、辿っていくとこうした現実に行き着くのではないかと思います。この書籍の中で取り上げられているのは、ドロドロした現実の上澄みだけを掬い取った「お話し:物語」ではなく、ドロドロした現実そのものです。怖いお話しよりなお怖いと思います。でも、それが紛う方無い現実で、自分の親の親の親の・・何某かは、そうした時代を見て、実際に暮らし、生を終え、自分たちに世代を譲ってきたのです。この本を読むとなにかそうした世代の連なり、時代の移り変わりの中に漂っている小さな自分に気づかされるような気もいたします。

この本の編集者の一人に人情の機微に通じた小説家山本周五郎が名を連ねているのは興味深く、また、なるほどという気がいたします。どうぞ是非ご覧になってみてください。へたな小説を百読むよりも得られるものは大きいと思いますので・・
(私のお奨めは,比較的明るい「残酷物語」:「飛騨の乞食」の「仏の福松」です。)

5.0 表題で ビビッテはいけない。
表題が「日本残酷物語」 とあると内容が特殊で、偏向していると思われるかもしれない。実際、当時の調査技術の未熟さからも、時代背景から由来する問題もあるので、すべてが正しいわけではない。
ただ、100年前の日本がどのような状況だったかを、理解し今の日本を振り返るには、良い本である。
全巻面白いが、特に第1巻の宮本常一が聞き書きした「土佐檮原の乞食」の話は必読である。

これを読むたび、差別や、親切、驕慢、エゴなど考えさせられる問題は多い。

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