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ミリー―天使にであった女の子のお話

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ミリー―天使にであった女の子のお話の商品レビュー

5.0 時間と死を超えた愛の物語
 『ミリー 天使にであった女の子のお話』は、1816年、ヴィルヘルム・グリムが母を亡くしたミリーという少女に宛てた手紙に添えられた物語です。ヴィルヘルムは兄のヤーコプと共にグリム童話の収集家として知られています。

 ヴィルヘルムの手紙は、小川を流れる花と夕ぐれの山を越えて飛んでゆく鳥をモチーフとした詩的で美しい文章で綴られています。ミリーの家族が所有していた物語が売却され、1983年に出版社の手に渡ったことから、すぐれた絵本作家モーリス・センダックとの出会いがありました。5年がかりで描かれたというセンダックの渾身の絵が添えられています。
 
 夫に死に別れた女性が、ある村のはずれに、たった一人残された娘と住んでいました。娘は気立てもよく可愛い子でした。お祈りを朝晩欠かさず、スミレやローズマリーを花壇で上手に育てる娘には、きっと守護天使がついているに違いないと母親は信じていました。
 そんな二人に戦争が押し寄せてきます。母親は戦争から娘を守るために、森の奥に娘を逃がしてやりました。森の奥深くで聖ヨセフと出会い、娘の守護天使である金髪の美しい女の子と出会い、3日間を過ごし、母親のもとに戻ると、30年の年月が過ぎていました。
母親は30年の年月を経て、また、大戦争の恐ろしさと苦しさを経て、すっかり老いていますが、娘は、昔と同じ服を着て、昔と同じ姿のまま母親の前に立っています。再会を果たした二人は・・・。
 3日が30年という不思議な時間軸の中で、戦争という悪、信仰、母と子の愛、神の愛が語られています。ヴィルヘルムが生きた古いドイツは、当時ナポレオンの占領下に置かれたり、フランス軍の占領下に置かれたり、非常に不安定な時代でした。物語の中で、ミリーと守護天使の無垢な美しさと戦争の醜さがコントラストをなしています。

 この物語を通して、ユングの弟子であったマリー=ルイーゼ・フォン・フランツの「昔話は、普遍的無意識的な心的過程の、最も純粋で簡明な表現です。それは、元型を、その最も単純であからさまな、かつ簡潔な形で示しています。」という言葉を思いました。ミリーが過ごした深い森は、人間の普遍的無意識とも思えます。小川に流した花が、ずっと離れた場所で別の女の子が流した花と出会うように、また、夕ぐれの山を越えて飛ぶ鳥が最後の日の光の中で、もう一匹の鳥と出会うように、人間は普遍的無意識の中で、母の愛や神の愛の元型と出会えるのではないかと予感させられました。
 ヴィルヘルムの慈しみに満ちた手紙に始まる『ミリー』は、時間と死を超えた愛の物語と言えるかもしれません。モーリス・センダックの幻想的で美しい絵と神宮輝夫氏の美しい日本語が、絵本の芸術性を高めていることを感じます。

4.0 物語もよいが装丁が美しい
原作はヴィルヘルム・グリムですが、ご存じのかたは少ないのではないかと思う。
グリムがミリーという少女に宛てた手紙の最後に書かれていた物語が、1983年になって発見されて、日の目を見た作品である。

この物語は読み手にとってはほろ苦い終わりかたをする。
しかし、ほろ苦いと感じるのは日本人だからかもしれない。
グリムの時代のドイツ人ならば、ほろ苦さの次に深い歓びを感じるのではないかと思った。
宗教色がかなり強くて、キリスト教への深い信仰心をベースにした物語である。

聖ヨセフ、、、イエス・キリストの育ての父が、物語ではなにを象徴しているのか、わたしにはわからなかった。
守護天使も日本人にはなじみが薄いと思う。
昔のカソリックでは、信者にはそれぞれ守護天使が一人ついて守っている、という考えかたがあったけれど、今ではそういう話しはあまり聞くことはない。
戦争の話しもほんの少し触れられただけで、それが大きなテーマには思えなかった。

この物語は、モーリス・センダックの絵で一流の作品に仕上がったのではないだろうか。
それでも、ほろ苦い、あるいは歓びに満ちたラストは、グリムの独壇場だった。
グリムからこの物語を書いてもらった200年前の少女は、どんなふうに感じたのだろう。
最後まで読んで、ちょっぴり涙をこぼしたのだろうか。
5.0 精神の崇高さ
まず、センダックの美しい絵に心惹かれました。「かいじゅうたちのいるところ」とはまた違ったタッチで描かれた絵には気高ささえ感じます。読み進めていくと、女の子の純粋な心や、母親の深い愛情を感じ、結末ではあまりの衝撃に言葉も出ませんでした。でも、幸せには人それぞれの形があるのだと、この本は教えてくれました。精神性の高さに圧倒された一冊です。
5.0 気高い話にふれて
小さい頃読んだ本ですが、とにかくセンダックの幻想的な挿絵が息を呑むほどに素晴らしかったこと、そしてストーリーのショッキングな結末に涙を流したことを覚えています。

女の子の歩く風景の何と美しいこと、そして少女の守護天使の何と気高いこと!センダックといえば『かいじゅうたちのいるところ』のユーモラスな挿絵が有名ですが、ここでの挿絵といったら、もう!

従来のグリム童話には見られなかった(多分)戦争というキーワードが登場します。これはもしかしたら昔起こった話かもしれないし、これから起こる話かもしれない。戦争から逃れるためには、私たちは死を選ぶしか道はないのでしょうか。
この話に登場する女の子のために、私達は何ができるだろうか?そう強く思います。

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